2002 Fiscal Year Annual Research Report
有機珪素化合物を用いた炭化珪素エピタキシャル成長における表面反応過程
Project/Area Number |
14550023
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
安井 寛治 長岡技術科学大学, 工学部, 助教授 (70126481)
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Keywords | 炭素珪素 / エピタキシャル成長 / 表面反応 / 質量分析 / 表面構造 |
Research Abstract |
申請者はこれまで反射高エネルギー電子線回折装置(RHEED)とX線光電子分光法(XPS)を用い、ジメチルシラン(DMS)とモノメチルシラン(MMS)各々のSi基板との反応によるSi表面の構造変化を解析し、吸着分子からの原子の拡散とSiC核発生過程について考察してきた。そしてXPSよりSiC核発生前に現れるSic(4x4)構造の表面層にSixCxアロイ層が形成されていることを見出し、またRHEEDパターンの変化から得られたSic核発生後の初期成長速度の活性化エネルギー値から、初期成長時の反応はSiC核表面の水素がSi表面のダングリングボンドに移動し、その後Si-H結合から水素が脱離することで進行するというモデルを立てた。しかしSiとSiCという大きな格子ミスマッチが存在する系では、格子歪みにより成長の活性化エネルギーが本来の原料分子のC-H結合からの水素脱離に必要なエネルギーより小さくなる可能性も否定できない。そこで本研究計画では走査型プローブ顕微鏡装置(STM)を用い、表面構造を原子スケールで直接観察すると共に発生核近傍での走査トンネル分光測定(STS)により水素原子の移動を調べる。さらに結晶成長チャンバーにマスフィルタを取り付け、有機珪素化合物の分解とSi表面からのラジカルの脱離過程をその場観察し、脱離種からのラジカルや原子の移動を調べ、有機珪素化合物とSi基板との反応過程、SiCの核生成・成長の全体像を解明することを目的に実験を行っている。 平成14年度は、第一段階として結晶成長チャンバー内でSi(100)の清浄表面を形成した後、いくつかの基板温度条件下、MMSを微量導入、RHEEDにより表面構造の変化をその場観察し、特徴的な構造が見られた各段階で反応を止め、その表面の原子配列をSTMを用いて詳細に評価した。その結果、Sic(4×4)構造形成時の表面にはc(4×4)と(2×1)構造が共存していること、またドメイン内の格子は収縮しているのに対し、(2×1)構造のドメインのダイマー列間の距離は大きくなっていることが分かった。また5[nm]程度の大きさのSic(4×4)ドメインがAFMで観察されたSiC核の配列方向と同じ<010>軸方向に沿って配列しているのが、観察された。このことからその後に発生するSiC核は、より格子定数の近いSic(4×4)構造上に形成されるのではないかと推察された。また、SiC核発生時のSiC核の周囲の領域に対するSTS測定から表面が水素原子により終端されていることを窺わせる特性が得られ、表面に吸着したMMSやSiC核表面から水素原子がSi表面に移動しその後Si-Hから水素が脱離するというモデルを支持する結果を得た。さらに本研究補助金で購入したマスフィルタを結晶成長チャンバーに装着、反応表面により発生するラジカル・分子の同定の実験を現在行っており、今後得られた実験結果を順次、学会で報告し論文にまとめてゆく予定である。
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[Publications] Kanji Yasui, Y.Narita, T.Inubushi, T.Akahane: "In situ observation of reflection high-energy electron diffraction during the initial growth of SiC on Si using dimethylsilane"Journal of Crystal Growth. 237-239. 1254-1259 (2002)
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[Publications] Y.Narita, T.Inubushi, Kanji Yasui, T.Akahane: "Si c(4x4) structure appeared in the initial stage of 3C-SiC epitaxial growth on Si(001)"Applied Surface Science. (印刷中). (2003)
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[Publications] Y.Narita, T.Inubushi, Kanji Yasui, T.Akahane: "Initial stage of 3C-SiC growth on Si (001)-2x1 surface using monomethylsilane"Applied Surface Science. (印刷中). (2003)
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[Publications] 成田 克, 犬伏宗和, 安井寛治, 赤羽正志: "モノメチルシランを用いた3c-sic成長初期過程"電子情報通信学会技術研究報告. Vol.102No.261. 31-36 (2002)
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[Publications] 原島正幸, 成田 克, 安井寛治, 赤羽正志: "MMSi, DMSiにより形成されるSic(4x4)構造の評価"電子情報通信学会技術研究報告. Vol.102No.434. 77-82 (2002)
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[Publications] H.Harashima, Y.Narita, Kanji Yasui, T.Akahane: "The role of carbon atoms during the formation of Si c(4x4) structure by organosilicon compounds"Proc. of the 20^<th> Symposium on Plasma Processing. 299-300 (2003)