2003 Fiscal Year Annual Research Report
イオンビーム照射による環境調和型保護コーティング膜の作製と信頼性評価
Project/Area Number |
14550085
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Research Institution | Himeji Institute of Technology |
Principal Investigator |
内田 仁 兵庫県立大学, 大学院・工学研究科, 教授 (30047633)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
花木 聡 兵庫県立大学, 大学院・工学研究科, 助手 (20336829)
山下 正人 兵庫県立大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (60291960)
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Keywords | 窒化物薄膜 / イオンミキシング蒸着法 / ピンホール欠陥 / 分極曲線 / 耐酸化性 |
Research Abstract |
三元系窒化物の(Ti,Al)NはTiNに置き換わる耐摩耗性硬質薄膜として注目され,これまでにイオンプレーティング,スパッタリングやイオンビームミキシングなどを利用して作製されてきた.本研究では,過酷環境下で対応し得る環境調和型保護コーティング膜の実用化を図るために,初年度は真空蒸着とイオン注入を融合したイオンミキシング蒸着法により(Ti,Al)N薄膜を作製し,NaCl型構造でAl最大固溶状態にある膜が最も優れた硬度と耐酸化性を与える可能性があるため,その最適成膜条件について詳しく検討した. 今年度は,初年度の研究で得られた知見を基に,(Ti,Al)N薄膜の耐食性や耐酸化性に及ぼす成膜条件の影響を中心に検討した.薄膜の作製にはイオンミキシング蒸着装置を用い,基板には(100)単結晶Siウエハ,SUS304ステンレス鋼板および白金板を用いた.Al,Tiの蒸発原子数の比である蒸発比Al/TiおよびTiとAlの和と基板に照射するNイオン数の比である輸送比(Ti+Al)/Nを種々変化させて成膜した.なお,基板温度については特に制御しなかった.薄膜のピンホール欠陥面積率については臨界不働態化電流密度法により,耐酸化性については大気中で酸化試験を行い,オージェ電子分光法による深さ方向の組成分析および示差熱分析結果によりそれぞれを評価した.その結果,蒸発比2,輸送比3の成膜条件はNaCl型構造からウルツ型構造へ変化する遷移領域に対応しており,ここではNaCl型構造でAl最大固溶状態の(Ti,Al)N薄膜が形成されていた.輸送比が増加してもピンホール欠陥面積率の変化は少なく,わずかに輸送比3で最小となる傾向を示した蒸発比を増加させても.ピンホール欠陥面積率はほとんど変化せず一定値を示したことから,ピンホール欠陥面積率に及ぼす輸送比および蒸発比の影響は比較的少ないことが判明した.TiN薄膜の酸化開始温度は約823Kであるが,(Ti,Al)N薄膜のそれは約1023Kまで上昇する.(Ti,Al)N薄膜の酸化物層は,Alリッチな上層(Al_2O_3)とTiリッチな下層(TiO_2)の2層構造をとり,特に上層ではAlが選択的に酸化されて保護性のあるAl_2O_3を形成するため,TiN薄膜に比べて優れた耐酸化性を示すことが明らかになった.
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[Publications] 植田壮映, 花木 聡, 山下正人, 内田 仁: "イオンビーム援用(Ti,Al)N薄膜の作製と特性評価"(社)腐食防食協会 第50回材料と環境討論会講演集. 79-82 (2003)
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[Publications] H.Uchida, M.Yamashita, S.Hanaki, T.Ueta: "Characterization of (Ti, Al)N Films Prepared by Ion Mixing and Vapor Deposition Technique"Book of Abstracts of Thirteen International Conference on The Strength of Materials. 208 (2003)