Research Abstract |
生産工場では,研削油剤の飛散が作業環境を悪化させ,人体に悪影響を及ぼすなどの弊害も問題視されている.廃油処理費用も生産コストのおよそ30%を占める.近年では研削油剤を使用しない加工法が求められており,それらの研究が盛んに行われてきた.本研究では,研削油剤に代わる冷媒として,冷風,ミスト,冷風ミストを用い,各々の潤滑・冷却効果を明らかにし,環境対応型研削加工技術の確立を目指し,気孔有用性を実験から明らかにしようとした. 粒度,砥粒率を一定の下で結合剤率,気孔率を変えた4種類のビトリファイドボンドカップ型砥石を作製し,使用した(外径φ100mm,内径φ90mm,厚さ5mm.実験では,湿式研削に加え,極少量の油剤を用いるミスト研削(合成系油剤),油剤を全く用いない冷風研削,そしてミストと冷風を同時供給する冷風ミスト研削を行った.グラインディングセンターVKC-45を用いて,正面研削を行った.工作物にはS50Cの焼鈍材を用い,砥石には混合比の異なる4種類のPAビトリファイドボンドカツプ型ホイールを用いた.研削面粗さは,表面粗さ計(SURFTEST SV-600)を用い,研削条痕に対し垂直な方向に測定した.また各冷却方式における研削後の表面と切り屑をSEM(×1000)により観察した. 湿式および冷風ミスト研削後の面粗さ,ミスト研削後の面粗さ,各砥石におけるミスト供給量と面粗さを求めた.各冷却方式について比較すると,冷風研削だけが大きい値(Ry=4)となっていた.これは,冷風研削に潤滑作用がないことや,接触面積が大きいことにより発生する摩擦熱が増大し,その熱量を冷風の冷却作用だけでは低く抑えることが出来なかったためと考えられる.湿式,ミスト,冷風ミストにおいてはそれぞれの潤滑作用により低い値となっている.ミストと冷風ミストを比較すると,ミスト研削では気孔率の増加に伴い,面が悪くなっているのに対して,冷風ミスト研削では横ばいとなり,改善されている.これは冷風が通り易くなったことで冷却作用と共に,気孔による切り屑の排除作用がみられたことが一因と考えられる.何れの砥石においても20〜30ml/hr時に研削面粗さの最小値をとる,下に凸の傾向を示した.そして1ml/hr時にはミスト供給量不足が原因と思われる摩擦による焼けやビビリが見られたことから,急激に面が悪化する.以上より気孔・潤滑・冷却作用を検証した結果以下のことが明らかになった.冷却作用よりも潤滑作用の方が摩擦熱を低減できる.ミスト研削では供給量20〜30ml/hrの間に最適値が存在する.気孔は35〜40Vol.%がよいことが分かった.
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