2002 Fiscal Year Annual Research Report
血管平滑筋細胞における流体力学的作用と生理学的活性機構との関連に関する研究
Project/Area Number |
14550142
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
多田 茂 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助手 (70251650)
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Keywords | 血管平滑筋細胞 / 流体力学的せん断応力 / カルシウムシグナル伝達 / フォトンカウンティング法 |
Research Abstract |
血管壁の内膜部に位置する平滑筋細胞表面では,血管内壁からの浸透流により20dynes/cm^2程度の大きさのせん断応力が作用することが予想されている。このせん断応力の大きさは血管内壁の内皮細胞に作用するせん断応力と同程度の大きさに達することから、このせん断応力が平滑筋細胞の生理学的機能に大きな影響を及ぼしていることは容易に予想される。特に動脈硬化病変の前駆症状として発現する内膜肥厚が平滑筋細胞の機能異変による異常増殖が原因であることを考慮すると、平滑筋細胞の機能異変に浸透流によって誘起されるせん断応力が深く関わっている可能性が強い。従って本研究では、平滑筋細胞に作用する流体力学的せん断応力と細胞の生理学的活性機構の関係について明らかにすることを目的とし、本研究課題では血管平滑筋に作用するせん断応力によって誘起される細胞内Ca^<2+>シグナル伝達機構について調べた。 流体力学的せん断応力刺激に対する細胞内Ca^<2+>の応答変化を測定するために,Ca^<2+>反応性発光タンパクであるエクオリン(Aequorin)を用いた。エクオリンを特殊な方法により平滑筋細胞内に導入し、その後せん断を負荷した細胞内でエクオリンがCa^<2+>と反応する際に発生する励起光を,高感度光電子増倍管を用いた単一光子計数法により測定した。実験条件は(1)1分間せん断応力負荷→(2)5分間発光計測→(3)1分間せん断応力負荷→(4)10分間発光計測とした。1回目のせん断応力負荷後と,2回目のせん断応力負荷後に急峻な立ち上がりを持つエクオリンによる発光が観察されたが、発光は数分以内に指数関数的に減少した。このことにより平滑筋細胞でのせん断応力負荷によるCa^<2+>流入及び,細胞内でのCa^<2+>ストアによる消費過程は即応性であることが分かった。また、細胞内のCa^<2+>ストアの阻害剤であるタピシガーギン(TG)を負荷して同じ測定繰り返し行っても同様な発光が観察されたため、発光が細胞外からのCa^<2+>流入によるものであることも確認された。
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