Research Abstract |
1.脳機能を画像化する方法fMRI (functional Magnetic Resonance Imaging)は,脳活動の空間分解能が優れていることから,視聴覚や高次の脳機能研究によく用いられている.視覚,聴覚および触覚の脳高次機能のfMRI実験を実施するため,前年度に開発された高磁場環境下における応答装置のノウハウを活かして,高磁場による誘導起電力が生じない触覚長さ呈示装置を開発した.人物同定メカニズムの解明に基礎研究機器を提供している. 2.姿勢・身振りによる脳の復活部位を検討するため,まずfMRI実験を用いて物体長さ知覚の脳高次機能の賦活部位を測定した.この結果は,違う長さの触覚認知は,同じ脳活動処理過程で感覚計算するということを示唆した.また触覚長さの認知について,物体長さ知覚は,手指関節感覚を通して1次体性感覚野BA3に送られ,頭頂葉連合野(BA7/BA40)で空間認知を行い,中前頭回(BA46)で記憶,計算を行うと考えられる. 3.人物同定には,人間の視覚注意と聴覚注意が深く係わっていると確認された.そこで,実験刺激として視覚・聴覚に空間・時間的課題またはそれらの複合課題を与え,これらの課題に対する反応時間を測定する認知実験と,課題中の脳内活動は機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて計測された.計測結果を解析して視覚・聴覚間の注意に関する差異について検討した.視覚・聴覚,空間・時間の全ての課題において,中心前回,中心後回,補足運動野の活動している確率が高かった.中心前回は運動,中心後回は体性感覚,補足運動野は運動の統括にそれぞれ関与していると言われている.また,視覚・聴覚共に時間課題においてのみ,前頭眼野,前頭連合野の活動する確率が高い.これらの部位は眼球運動の統括や作動記憶に関わると考えられている.これらの結果は人物同定メカニズムの解明に基礎データを提供している. 4.身振り特性を検討するため,実験装置を作成し,全身協応運動を用いた課題における予測時間と動作時間の関係を明らかにした.実験結果によって,(1)動作時間は視覚情報の影響を受けていない,(2)自己の動作時間と予測時間との関係は予測時間のほうが小さく見積られている,(3)予測時間は視標速度からの依存性の影響を受けておらず、視標速度の減少に伴って予測時間が増加することなどのことはわかった.
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