Research Abstract |
本年度は,1)中山基地送信局・昭和基地受信局でのトーン送受信実験の,前年度までの2受信系統を1受信系統に縮小した形での継続,2)ドームふじ観測拠点にもリモート局を設置し,昨年度からの中山リモート局と合わせた2リモート局からの同時データ収集実験,3)次年度の実験のための新MBCシステム"RANDOM"の開発・製作,および国内テスト,4)中山リモート局、昭和マスター局によるRANDOMシステムの立ち上げ,5)昨年度の実験データの解析,を行った. 1)2受信系統での実験結果から,両系統からのデータには大差はなく,1系統のデータからでも多くの興味深い考察が出来ることがわかり,流星活動の季節変動など,1年間のデータでは十分でない多くの現象の解明が期待できる. 2)スプリットケーブルを用いた実験は順調に進行しており,極冠域にあるドームふじ局との間でも流星による通信が可能なこと,中山局との間より頻度・規模は少し小さいが,夜間のオーロラがらみの通信路の確立(非流星伝搬)現象も現れること,などがわかった.ただ,昭和マスター局では,無線機-アンテナ間が約150mもあり,ケーブルロスのため各リモート局向けの送信電力は実質25W程度しかなく,MBCとしてはかなり小電力で,2リモート局からのデータパケットの衝突確率などの考察には十分なデータは得られていないようである. 3)RANDOMシステム用のソフトウェアモデムSMR2003,送受信機IT5000を完成し,総務省から免許を取得した.国内実験によると,これまでのMCC社のシステムより数倍以上のスループットが期待できることが確認された. 4)RANDOMでは,マスター,リモートとも送信電力は100Wとしたので、前年度までのMCCシステム(マスター局の送信電力150W,実質65W)による1リモート局構成での実験結果と比較するためもあり,昭和基地のケーブルをより損失の少ないものに変更して実験を開始した. 5)最初の1年間の,トーン送受信,データ伝送両実験結果の分析を行い,夜間の高いデューティ比を持つ非流星伝搬現象もデータ伝送に使用可能であること,非流星伝搬現象の修了直前に大きな周波数変動が起きやすいことなどが判明した.
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