Research Abstract |
南極における3年間の流星バースト通信実験の最終年度となる本年度は,データ伝送実験に,研究代表者の研究室で開発した,DSPによるソフトウェア無線機を用いたRANDOMシステムを投入した。実験は,これまでどおり昭和基地-中山基地間で行われ,種々の準備の後,2004年4月から解析用のデータを取り始めた.12月初めに中山基地局が閉鎖されたので,実験は11月末で終了した.この間,システムは順調に稼動し,大量の貴重なデータが得られた.結果は,周波数・アンテナ・出力電力などに関してほとんど同じ条件で行われた2002年度のMCC社製システムによる実験の結果と比較され,大幅に優れた性能を持つことが実証された.どちらの実験でも,5分毎に発生された20バイトのデータの伝送を試みた.MCCシステムでの実験では,2時間以内に伝送されないパケットは削除されるように設定したが,RANDOMによる実験では送信側に104個のデータパケットが溜まった場合,それ以上のデータは削除されるように設定した.またRANDOMでは,データパケットが無いときにプローブパケットを受信したらダミーデータパケットを送信するようにした,このように設定したときのRANDOMの実験期間中総平均スループットは約3bpsとなった.これからダミーデータを除外し,さらに2時間以上経過したものは除外するなどして,2002年度のMCCシステムと同じ条件で両結果と比較したところ,データパケットの伝送率はRANDOM約80%,MCC約60%となった。また,それまでの年度に引き続き本年度も行ったトーン実験結果を見ると,2004年度は通信路デューティがかなり低かったので,2002年度も2004年度と同じ通信路デューティだったと仮定して推定したところ,MCCシステムの伝送率は約40%となった. また,本年度は,同種の機器を用いて,浜松-宮崎間で10月から12月にかけて長期のデータ伝送実験およびトーン実験を行った.その結果,通信距離が短いにもかかわらず,南極での実験より低いスループットしか得られなかった,これは,雑音環境の違い(特に浜松局の高い雑音レベル)によるものと思われる.
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