移動通信における遮蔽壁がある建造物内の電波伝搬問題に関する研究

2003 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 14550390
• Research Institution: Fukuoka Institute of Technology
• Principal Investigator: 松永 利明 福岡工業大学, 情報工学部, 教授 (40148911)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 内田 一徳 福岡工業大学, 情報工学部, 教授 (50099024)
• Keywords: 遮蔽壁 / 建造物 / 電波伝搬 / FVTD法 / レイ・トレース法

Research Abstract

無線を使用した移動体通信は、今日の情報化社会において益々その重要性は増している。しかしながら、現在の都市環境は益々悪化の一途で高層ビル、地下街およびビル棟内などの損失誘電体の壁で囲まれた建造物内での電波伝搬特性を知ることが重要となっている。特に遮蔽壁や分岐・折れ曲がりがある場合は伝搬特性が大きく減衰することがこれまでの研究で分かっているが、その具体的な伝搬経路についてはよく分かっていない現状である。本研究では、ビル屋内等の建造物に関する構造として壁がコンクリート等の損失誘電体でできた,現実の屋内平面図に近い基本的な壁構造を考慮し,このような環境下において電磁波が遮蔽壁などを透過して如何に伝搬していくか,さらにコンクリート等でできた壁内部の複雑な伝搬状態を実用的な観点から理論解析と実験的検討を行っている。理論的な数値計算は建造物内の電波伝搬問題に精密解法のFVTD法と近似解法のレイ・トレース法の適用によるものである。建造物内の任意の場所に線状波源をおいた、分折れ曲がりをもつ左右の壁のみの2次元構造空間及び壁内部の伝搬についてはFVTD法及びはレイ・トレース法を適用し、3次元の断面が方形空間の伝搬についてはレイ・トレース法を適用して解析している。数値計算と並行してマイクロ波を用いた縮小模型の実験装置で伝搬実験を実施し、基本的な建造物の空間や壁内部の電界強度分布について数値計算結果とよく一致することを実証している。また、粗壁面、壁内部及び壁後面からの反射特性について、実験的に伝搬状態を知ることができた。従って、建造物内の基本的な壁からなる分岐折れ曲がりをもつ空間の伝搬特性、2室間の基礎的な透過、反射及び回折を考慮した伝搬状態を明らかにすることができた。さらに、壁内部に鉄筋や金属物がある場合の理論解析及び実験的な検討を行っている。これらの研究成果については、学術論文、研究会及び学会講演等に発表している。今後は、実際の建造物をモデルとした平面的な構造でなく、立体的な複数階の部屋間の電波伝搬について理論的及び実験的な両面からの解決を図る予定である。

Research Products

• [Publications] 下河大浩, 松永利明, 内田一徳: "FVTD法とレイ・トレース法によるS字形曲がり2次元トンネル内の電波伝搬の解析"電気関係学会九州支部第56回連合大会. 01-2A-13. (2003)
• [Publications] 松永利明, 樋口貴弘, 下河大浩, 内田一徳, 松永真由美: "任意の角度をもつ2次元トンネル内での回折波を考慮した電界強度分布"映像情報メディア学会技術報告(放送技術). Vol.28,No.4,BCT2004-8. 29-32 (2004)
• [Publications] 松永利明, 安河内潤, 福島州男, 内田一徳, 松永真由美: "壁に囲まれた閉空間内での電波伝搬"映像情報メディア学会技術報告(放送技術). Vol.28,No.4,BCT2004-9. 33-36 (2004)
• [Publications] 安河内潤, 松永利明, 内田一徳: "コンクリートで囲まれた2室間での電波伝搬"2003年度電子情報通信学会九州支部学生会講演会, B-10. 34 (2003)
• [Publications] 福島州男, 松永利明, 内田一徳: "低角度入射波によるコンクリート壁面からの反射電界強度"2003年度電子情報通信学会九州支部学生会講演会, B-11. 35 (2003)
• [Publications] 樋口貴洋, 松永利明, 内田一徳: "任意の分岐角をもつ2次元トンネル内の電界強度分布"2003年度電子情報通信学会九州支部学生会講演会. 37 (2003)
• [Publications] Mayumi MATSUNAGA, Yutaro SEKIMOTO, Toshiaki MATSUNAGA, Takeshi SAKAI: "An Experimental Study of Submillimeter-Wave Horn Antennas for a Submillimeter-Wave Array"Astronomical Society of Japan. No.55. 1051-1057 (2003)
• [Publications] M.Matsunaga, T.Matsunaga, Y.Sekimoto: "Analysis of Submillimeter-Wave Horn Antennas for Submillimeter-Wave Telescopes"9th International Symposium on Microwave and Optical Technology. 116 (2003)
• [Publications] 松永真由美, 松永利明, 関本裕太郎: "サブミリ波コルゲートホーンアンテナの高性能化設計法"電子情報通信学会技術報告. AP2003-256. 37-40 (2004)
• [Publications] 松永真由美, 松永利明, 関本裕太郎: "サブミリ波ホーンアンテナの評価測定法"電子情報通信学会2004年総合大会(Mar. 2004). B-1-281. (2004)
• [Publications] 内田一徳: "閉じた空間内電波伝搬の研究"機械の研究. 55・11. 1135-1141 (2003)
• [Publications] 松下隆洋, 内田一徳: "トンネルや地下街における高次の回折レイを考慮した電波伝搬解析"電気学会電磁界理論研究会. EMT-03-68. 72-82 (2003)
• [Publications] 中村勝朗, 内田一徳: "レイ・トレース法による誘電体スラブやウェッジによる散乱問題の解析"電気学会電磁界理論研究会(2003-11-19). EMT-03-48. 63-68 (2003)
• [Publications] 足立和香, 内田一徳: "ランダムに変動するウェッジによる電磁波解析"電気学会電磁界理論研究会. EMT-03-101. 37-40 (2003)