Research Abstract |
1.樹林地の撹乱・破壊形式とその規模評価 前年度の研究成果から,洪水による樹林地の撹乱・破壊形式として,a)樹林地上流端および樹林地境界での流下物捕捉(遮蔽面積増加)による樹木の破壊,b)樹林地基盤層(細粒砂層)の河床撹乱によって生じる樹木の撹乱,c)低水路砂礫河岸の侵食とそれに伴う樹木流失のそれぞれが素過程として抽出された.こうした素過程を通じて過去の洪水がもたらした樹林地の撹乱・破壊を抽出し,そこでの樹林地の破壊規模,破壊率を評価した.すなわち,平成13,14年洪水による利根川水系渡良瀬川礫床区間を対象として,洪水前における水辺の国勢調査による植生分布,および洪水前後の航空写真から樹林地領域のベースマップを作成し,洪水後の地形から基盤撹乱(河床変動,河岸侵食)による樹林地領域の変化を求め,これにより木本,草本類の破壊率を算出した.また,一般化座標系平面流計算から洪水再現計算を行い,樹木にかかる流体力とモーメント破壊の可能性を考察,さらに河床変動計算から河岸侵食に伴う地形変化を評価し,計算から推定された破壊・撹乱と洪水痕跡調査とを比較することで,上記3つの素過程にもとづいた樹木撹乱・破壊形式の区分の妥当性を示した. 2.河床基盤の撹乱による樹林地の撹乱・破壊の評価と樹林地管理の基礎資料作成 物理(河床)基盤の撹乱は,表層河床材料のどのクラスの礫径までが動き得たか(移動限界礫径)の推定と,基盤そのものの変化(河床変動と河岸侵食)から評価できる.この点に注目し,樹木粗度を形状抵抗として取り込んだ一般化座標系平面流計算を用いて,既往洪水での樹林地撹乱状況と対応する水理量を求めた.ここで,樹林地の破壊撹乱状況を,(1)草本類の剥がれ,(2)木本類の傾斜,根付き倒木,(3)根茎の破壊,樹木の流失,の3つのランクに分類し.これらの破壊・撹乱基準を表層河床材料の移動限界にもとづいて評価した.そして,樹林地の撹乱とその後の樹林地回復調査から,(2)の撹乱規模は動的樹林化より洪水後顕著な樹林地再生を生むことを示し,これらをまとめて樹林化河道における樹木管理に関する基礎資料を提示した.
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