2003 Fiscal Year Annual Research Report
水工学への応用を考慮した水生植物モデルの開発と湖沼・河川の炭素、栄養塩循環の解明
Project/Area Number |
14550509
|
Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
浅枝 隆 埼玉大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (40134332)
|
Keywords | 抽水植物 / エコロジカルモデリング / 生長モデル / ヨシPhragmites australis / ヒメガマTypha angustifolia / マコモZizania latiflia / ヒロハノエビモ Potamogeton perfoliatus / 栄養塩循環 |
Research Abstract |
平成15年度も昨年度に引き続き、昨年度行っていた、データ収集のための抽水植物の生態調査と、それに基づいたモデリング、沈水植物の室内実験は継続して進めた。これによって、昨年度発見していたいくっかの特性は検証された。この他に、本年度は以下のような新しい展開を行った。 まず、湖沼を対象にしたものについては、ヨシモデルを手賀沼に適用し、ヨシの植物体を介した栄養塩の循環量の予測を行った。また、刈り取りによる栄養塩除去を考えた場合の刈り取りの時期の影響を定量化した。さらに、シャジクモの観測を開始し、その結果を基に、シャジクモが湖沼の水質の安定化に果たす役割を以下のように推測した。まず、シャジクモは湖底を覆うために、魚等の湖沼の泥への接近を阻む。これによって、湖沼の土壌からの栄養塩の流出が防止される。また、シャジクモ自体、栄養塩を吸収して増殖するものの、枯死後は速やかに分解し土壌に堆積する。ところが、この土壌は極めて粘性が高く、容易に巻き上がらない。そのため、シャジクモの枯死後生成した有機土は湖底に厚く堆積し、栄養塩をトラップし続ける。また、この土壌は極めて還元性が強く、他の種の進入を阻む。そのため、湖底を覆う背の低いシャジクモ群落が安定して存在する。 次に、木津川、花室川、手賀沼導水口等で、ツルヨシ、ササバモ、ヤナギモ、ヒメガマ、マコモ等の群落の観測を行って、流れ場のある場での特性を観測した。ここでは、以下のような点が明らかとなった。まず、砂州上に発達した抽水植物群落における有機物の堆積量は、枯死後の分解が遅いために、前回砂州が流出してから後の経過年に応じたものとなる。しかも、流出初期は地下茎が小さく、地上部のバイオマスも少ないが、経過年と共に徐々に増加していく。 ヒメガマ、マコモ、ヨシが流れ場に存在する場合、ヒメガマとマコモは流速に応じて、株を集中させ、流れに対応する。それに対して、ヨシは茎が堅くこの茎が立ち枯れの茎に絡まることにより、大量のリターを捕捉する。そのため、流れの抵抗が大きくなることから、流れ場では他の種と比較して弱いものとなる。マコモは極度に株を集中、密生させるために、流れが強くなると、株ごと流されることになる。 沈水植物であるササバモ、ヤナギモの観測では、以下のようなことが明らかとなった。沈水植物群落が形成されると、流れはその群落を迂回するようになる。そのために、その場で生産される有機物、上流から流下してくる有機物はその群落内にトラップされる。また、流れが迂回することから、その流れにそった場所で流速が速くなり、洗掘も進行するために、群落がより顕著な砂州として残されることになる。
|
Research Products
(7 results)
-
[Publications] S.Karunaratne, T.Asaeda, K.Yutani: "Shoot Re-growth and Age Specific Rhizome Storage Dynamics of Phragmites australis Subjected to Summer Harvesting"Ecological Engineering. (in press). (2003)
-
[Publications] S.Karunaratne, T.Asaeda, S.Toyooka: "Colour-based estimation of rhizome age in Phragmites australis"Wetlands Ecology and Management. (in press). (2003)
-
[Publications] T.Asaeda, V.K.Trung, J.Manatunge: "Effects of flow velocity on feeding behavior and microhabitat selection of Pseudorasbora parva : a trade-off between feeding and swimming costs"Transactions of American Fisheries Society. (in press). (2003)
-
[Publications] M.Sultana, T.Asaeda, J.manatunge, A.Ablimit: "Colonization and growth of epiphytic algal communities on Potamogeton perfoliatus L.under two light conditions"New Zealand Journal of Marine and Freshwater Research. (in press). (2003)
-
[Publications] S.Karunaratne, T.Asaeda, K.Yutani: "Growth performance of Phragmites australis in Japan : influence of geographic gradient"Environmental and Experimental Botany. 50. 51-66 (2003)
-
[Publications] T.Asaeda, J.Manatunge, T.Fujino, D.Sovia: "Effects of salinity and cutting on the development of Phragmites australis"Wetlands Ecology and Management. 11. 127-140 (2003)
-
[Publications] 浅枝 隆, 玉井信行編: "河川計画論"東京大学出版会(発行予定:2004年度中).