Research Abstract |
本研究は,都市政策立案の検討に資するため,「都市の生活の質」を評価する手法を開発し,その手法を用いて,主要都市の評価を試みることを目的としている. 昨年度は,評価手法の枠組みをAHP(階層化意思決定法)の絶対評価法をベースとしたものと定め,その評価プロセスを提示した.そのプロセスは,多岐にわたる都市の評価要因を細分化し,それらをツリー構造に整理し,各要素に評価者の価値観である重みをつけ,個別要素ごとの評価結果を総合化するものである.なお,都市の評価要素は,大きく,1)自然,2)社会,3)文化,4)健康・安全,5)福祉,6)公共施設,7)都市像の7つから構成するとした.また,提案した手法をサポートするため,価値観による重み付け法(意識調査アンケート)のパッケージプログラム(プロトタイプ)を開発した. 本年度は,提案した手法および開発したプログラムに改良を加え,地方の政令指定都市や中核都市などの評価を実際に行い,評価手法の適用可能性を検証した.その結果,住民等の価値観の違いを反映させた都市の生活の質評価が可能なことを確認した.また,提案した手法を用いて,都市政策立案へのフィードバックの可能性について検討した.提案した手法は,多岐にわたる都市のもつ素質を体系的に評価することができ,その評価分析プロセスを通じて,都市の課題や住民の意識を探ることが可能なことを確認した.本手法による都市評価を経年的に実施することで,都市政策立案の思考プロセスがより明確になり,市民等への都市政策方針の説明も容易となると考えられる.
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