2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14550633
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 博之 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (00011221)
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Keywords | ジョサイア・コンドル / 近代建築 / 書簡史料 / 三菱社 / 高輪邸 / 茅町邸 |
Research Abstract |
前年度行った書簡史料の翻訳をもとに、関連資料などを参照しながら、翻訳の校訂作業、書簡の内容の分析、および全体の取りまとめを行った。 本研究で扱った書簡史料は、1894(明治27)年から1915(大正4)年までの、主に岩崎家(三菱社)関連のものであったが、時系列的にもその内容についても広範囲に渡るもので、コンドルの活動の幅の広さを物語るものであった。それを大きく分類してみると下記のとおりである。 1.岩崎家との私的交流をしのばせるパーティ等の招待状およびそのお礼状 2.岩崎家関連の邸宅(駿河台邸、茅町邸、高輪邸、加藤邸)の建設に関する業務上の書簡 3.コンドルの趣味のひとつである演劇の公演についての書簡(ラビット宛) そのなかでも特に2.の邸宅の建設にかかわる書簡群には、工事の依頼文書、工費の見積もり、邸宅内部の家具や装飾品(絵画)に関するものなどが含まれ、それらからはいまだ断片的にしかわかっていないコンドルの設計実務の詳細を明らかにすることができた。 具体的には、高輪邸の工事の見積もり書類からは、コンドルが建物の設計だけを担当する純粋な建築家としてだけではなく、建設費の管理などを行う総合請負人的な実務を行っていたことがわかり、茅町邸の応接婦人室にかざる絵画に関する書簡からは、コンドルが建物のみならず、その内部の調度品などまでにも助言を行う立場にあったことをしめしている。これらについては、報告書に詳細を記した。 また本研究で扱った史料には、コンドルの指示による西洋絵画の買い付けの書類群があり、これらは日本の明治期に関する美術史研究に大きな一石を投じるものであった。しかしながら今回扱った史料群は、ひとつひとつの書簡にそれぞれの分析がもとめられなければならない重要な書簡であったが、その広範囲さのために、それが十分になされたとはいえない。しかしこれらの書簡史料群をひとつの基礎データとして報告書の形にまとめ公開することで、今後、建築史のみに限らず、美術史、日本史研究の発展に寄与できると確信している。また今回の研究で、コンドルの書簡史料の集大成に向け、大きく前進したことがなによりの実績である。
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