2002 Fiscal Year Annual Research Report
わが国の石造建造物における構築技術の源流と伝来・伝搬過程に関する史的研究
Project/Area Number |
14550644
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Research Institution | Nagasaki Institute of Applied Science |
Principal Investigator |
林 一馬 長崎総合科学大学, 工学部, 教授 (80086420)
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Keywords | 建築史 / 石造 / 構築技術 / アーチ架構 / 伝来 |
Research Abstract |
平成14年度は、研究期間の初年度に当たる。当初の研究実施計画にしたがって、関連文献資料の収集・点検と国内外の現地調査を実施した。文献資料の収集は、主として古書籍を中心に行ったが、まだ探索しえていない海外書籍、調査報告書、関連論文等が残る結果となった。これについては次年度での補充を期したい。 他方、現地調査ではまず、わが国に伝来した石造の構築技術の源流を確認するための国外調査としては、わが国と深い交流のあったポルトガルとオランダを中心としたヨーロッパ地域の調査を9月に実施した。また、国内における石造の構築技術が伝搬したことを確認するための遺構調査としては、長崎県内において数度、県外では2月に鹿児島県地方、3月に沖縄県地方を実施した。 文献調査及び現地調査ともまだ継続中であるため、現時点では調査結果の詳しい分析は行っていない。したがってそれにもとづく構築技術の源流と伝来・伝搬過程の全体を体系的に考察するには至っていない。しかし下記の事項については、一定の成果を得ることができた。すなわちその1は、当初の研究予定には入っていなかったのだが、長崎県を中心としたキリスト教会堂の建築遺構についても、調査対象に含めることにした。その結果、ヨーロッパでの石造によるゴシック様式の教会堂が幕末以降にわが国に伝来、定着するに際しては、外壁を除く骨組構造は基本的に木造に転換されていたことが判明する。しかしこれは、わが国に伝来以降の変化ではなく、直前の欧米における先行事例があったろうことを予測していたのだが、これが現地調査で確認しえたこと。その2は、沖縄県における未見だった石造構築物を調査した結果、同県内に残存する遺構ではそのアーチ架構の技術系統はすべて中国伝来のものであることが確実視されるようになった点である。
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Research Products
(1 results)