2003 Fiscal Year Annual Research Report
超臨界流体中での酵素反応を用いたDNA増幅技術の開発
Project/Area Number |
14550743
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
三島 健司 福岡大学, 工学部, 助教授 (40190623)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松山 清 福岡大学, 工学部, 助手 (40299540)
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Keywords | 遺伝子 / 増幅 / 超臨界二酸化炭素 / 酵素 / 界面活性剤 / PCR反応 / ポリメラーゼ |
Research Abstract |
近年のバイオテクノロジーの発展にともない、生体関連物質の効率的な合成や増幅技術の開発が期待されている。特に遺伝子解析に関する分野で抽出した遺伝子(DNA)を解析可能な量まで短時間で、しかもエラーを最小限にして、増幅させる技術が必要不可欠とされている。その方法として、酵素(耐熱性DNAポリメラーゼ)反応において温度を制御し遺伝子増幅を行うPCR (Polymerase Chain Reaction)法が最も多く用いられている。しかしながら、PCR反応においては、さらなる遺伝子増幅速度の高速化と増幅エラーの削減が望まれている。そこで本研究では、超臨界二酸化炭素を遺伝子の反応場もしくは増幅場として利用することで、新たな遺伝子増幅技術の開発を検討した。 酵素等の生体関連物質は、分子量が大きく、その表面に親水性の官能基を有することから、一般に超臨界二酸化炭素中には単独で溶解不可能であることが知られている。特に溶媒中での酵素反応を検討した場合、酵素の溶媒中での溶解および分散状態が酵素反応に大きく影響を及ぼす。本研究では、W/Oエマルション法により酵素を高分子界面活性剤で被覆し、超臨界二酸化炭素中でも酵素を安定した状態で溶解または分散させる手法を提案した。特に酵素の活性部位に少量の水分を含んだままの状態で酵素を高分子活性剤で被覆することで、超臨界二酸化炭素中で新たな機能を発現することに成功した。酵素にα-キモトリプシンを用いることで、超臨界二酸化炭素中でのアミノ酸からのジペプチドの合成を試みたところ、水溶液中での反応に比べ、高い反応率を得ることができた。以上の結果より、界面活性剤被覆酵素を用いた超臨界二酸化炭素中での酵素反応が、生体関連物質の合成に有効であることがわかった。 界面活性剤で被覆した遺伝子増幅酵素(ポリメラーゼ)を用いた超臨界二酸化炭素中での遺伝子増幅反応について検討した。超臨界二酸化炭素雰囲気下でも遺伝子の増幅が可能であることがわかった。また、超臨界二酸化炭素雰囲気下で遺伝子を増幅させるには、添加水溶液のpHを最適化する必要があり、緩衝液の利用が有効であることがわかった。また、電気泳動写真により、超臨界二酸化炭素雰囲気下で増幅した遺伝子を分析したところ、水中での反応に比べ、遺伝子の増幅エラーが減少することがわかった。また、界面活性剤を最適することにより、常圧下における水中での反応に比べ、遺伝子の増幅効率が増加することもわかった。さらに、官能基の異なる複数の界面活性剤を用いて遺伝子の増幅反応に及ぼす界面活性剤の添加効果について検討した。その結果、イオン性界面活性に比べ、非イオン性界面活性剤を用いて酵素を被覆した方が、増幅効率が向上することがわかった。また、超臨界二酸化炭素に対して親和性を有するフッ素系の界面活性剤を用いたところ、遺伝子の増幅効率が最も高くなることがわかった。
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[Publications] K.Mishima, K.Matsuyama, M.Baba, M.Chidori: "Enzymatic Dipeptide Synthesis by Surfactant-Coated a-Chymotrypsin Complexes in Supercritical Carbon Dioxide"Biotech.Prog.. 19・2. 281-284 (2003)
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[Publications] K.Matsuyama, K.Mishima, K.Takahashi, R.Ohdate, H.Tomokage: "Environmentally Benign Formation of Poly(methacrylate ester) Microspheres by Precipitation Copolymerization in Supercritical Carbon Dioxide"J.Chem.Eng.Japan. 36・4. 516-521 (2003)
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[Publications] K.Matsuyama, K.Mishima, K.Hayashi, H.Ishikawa, H.Matsuyama, T.Harada: "Formation of Microcapsules of Medicines by the Rapid Expansion of a Supercritical Solution with a Nonsolvent"J.Applied.Polym.Sci.. 89・3. 742-752 (2003)
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[Publications] K.Matsuyama, K.Mishima, K.Hayashi, H.Matsuyama: "Microencapsulation of TiO_2 Nanoparticles with Polymer by Rapid Expansion of Supercritical Solution"J.Nanoparticle Res.. 5・1. 87-95 (2003)
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[Publications] K.Matsuyama, K.Mishima, R.Ohdate, M.Chidori, H.Yang: "Solubilities of 7,8-Dihydroxyflavone and 3,3',4',5,7-Pentahydroxyflavone in Supercritical Carbon Dioxide"J.Chem.Eng.Data. 48・4. 1040-1043 (2003)
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[Publications] K.Matsuyama, K.Mishima, K.Hayashi, R.Ohdate: "Preparation of Composite Polymer-SiO_2 Particles by Rapid Expansion of Supercritical Solution with a Nonsolvent"J.Chem.Eng.Japan. 36・10. 1216-1221 (2003)