Research Abstract |
申請者らが開発を行った市販のイオン交換膜とバイポーラ膜を組み合わせ,装置内に任意のpH勾配を形成する技術(特許公開2002-265494)を用い,今年度はホエータンパクあるいはカゼインタンパク中に存在し加水分解反応によって得る事ができるグルタミン酸,ロイシン,バリンの3種類のアミノ酸から成る加水分解モデル溶液におけるアミノ酸の膜透過特性を調べると共に,分離条件の検討を行った。 これまでに得られた知見を基に,はじめに弱アルカリ領域のpH勾配が形成される条件において,電流密度30A/m^2の条件の下でグルタミン酸とバリンの分離実験を行った。その結果,グルタミン酸は電気透析反応器内のpH勾配を有する各室を優先的に透過し,グルタミン酸とバリンの分離は良好に進行することが明らかとなった。しかし,グルタミン酸の輸率は低く,本実験における電流密度では透過に関する限界電流密度に達していることが示唆された。そこで,電流密度を10A/m^2として分離を行ったところ,輸率は30%程度,pH勾配形成に伴う水酸化物イオンの輸率が70%程度を示し,グルタミン酸の分離効率が上昇する結果を得た。 次に,加水分解生成物中のアミノ酸の大部分を占めるグルタミン酸,バリン,ロイシンを用いてモデル溶液を調製し,電気透析反応器を用いて分離実験を行った。その結果,pH勾配を8,12,13として分離実験を行ったところ,グルタミン酸はpH勾配を有する各室を優先的に透過するものの,他のアミノ酸は反応器内の途中の室でとどまり,グルタミン酸は完全に分離される結果を得た。しかし,バリンとロイシン間の分離係数は1.8程度であり,両アミノ酸間の分離はさらに多室化した装置を用いる必要がある事が示唆された。
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