Research Abstract |
本年度は,ソバの生育,収量構成および品種生態に関して以下のことがわかった.1)高温下では低温下より主茎の伸長速度が早くなるが,伸長停止は早くなり,主茎の下位節間が短くなるが上位節間は長くなった.長日条件では上位節間数が多いため,主茎長は生育期間中常に高温区が低温区より長いが,短日条件では上位節間数が少ないため,生育初期には高温区が長く,その後低温区が高温区に追いついた.長日条件で秋型品種の主茎の伸長がなかなか停止しないが,この傾向が温度に影響されないことから,主茎の伸長経過の特徴の品種間差が温度ではなく日長に影響されることがわかった.開花に関して,高温では初花節が高くなるが開花始期が早くなり,長日では初花節が高くなって開花始期が遅れることがわかった.秋型品種はこれらの影響を強く受けるが,質的な品種間差はなかった.主茎花房の咲き上がり速度は温度の影響を受けないが,長日によって秋型品種の速度低下が著しく,品種間差に日長の影響が著しかった.高温によって開花数が多くなり,子実数が減少し,結実率が低下した.これは両品種で同様であったが,短日条件下でしか調査できなかったため,長日条件下での調査が必要である.2)すべての区の光条件をほぼ同一にして,昆虫の活動制限による受精結実を検討した結果,受精率からみて虫媒以外(風媒)の受粉効果は2.3%,飛来型昆虫のみによる受粉効果は無処理の71〜87%,歩行型昆虫のみによる受粉効果は60〜107%であり,飛来型と歩行型の昆虫の受粉効果にあまり差異が無いことがわかった.3)地下水位5cmの土壌過湿条件の影響を調査したが,播種直後の過湿で出芽率が低下し,生育に対する影響は播種直後が最も大きかった.播種直後の土壌過湿によって主茎花房数が減少し,1花房あたり開花数および子実数が減少して,1個体あたり子実収量が減少した.
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