2003 Fiscal Year Annual Research Report
アポプラスト液とシンプラスト液の分別分析による果実の収穫後生理に関する研究
Project/Area Number |
14560018
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
村山 秀樹 山形大学, 農学部, 助教授 (40230015)
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Keywords | リンゴ / みつ症状 / 糖組成 / アポプラスト液 / シンプラスト液 / 環状剥皮 / ソルビトール |
Research Abstract |
リンゴ果実では,"みつ"として知られる水浸症状が品種によって発生する。昨年度の研究で,水浸症状が発生したリンゴ果実では,アポプラストへのソルビトールの蓄積が顕著であることが示された。本年度は,リンゴ果実の離層上部に環状剥皮処理を施すことで,成熟に伴う果実への糖の転流を阻害し,このことが水浸症状の発達や糖蓄積にどのような影響をおよぼすか検討した。 実験には,'ふじ'の早生系統を供試した。予想される収穫適期の20日前(9月16日)に,環状剥皮処理を行った。その後10日ごとに,果実からアポプラスト液とシンプラスト液を遠心分離法により分別採取し,それぞれの液の糖組成をHPLCで分析した。 その結果,対照区の果実では収穫適期から水浸症状が認められ,その後,成熟が進むにつれて症状が拡大したアポプラスト液の量は,水浸症状が認められた適期以降増加する傾向がみられた。これに対して,環状剥皮区では,実験期間を通して水浸症状の発達は認められなかった。対照区では,アポプラスト液とシンプラスト液ともに,スクロースとソルビトールの濃度が著しく上昇した。ソルビトール濃度の上昇は特にアポプラスト液で顕著であった。グルコースとフルクトースの濃度は,実験期間を通して大きな変化は認められなかった。環状剥皮区では,アポプラスト液とシンプラスト液ともに,成熟が進むにつれてスクロース濃度は徐々に減少し,逆にグルコース濃度が増加した。ソルビトール濃度は実験期間中低いレベルで推移した。 以上の結果より,リンゴ果実における水浸症状の発達には,アポプラストへのソルビトールの蓄積が関与していると考えられた。
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