2003 Fiscal Year Annual Research Report
瀬戸内海沿岸地域における里山創出を目的としたマツ材線虫病被害林の修復保全
Project/Area Number |
14560024
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
坂本 圭児 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 助教授 (90205766)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西本 孝 岡山県郷土文化財団, 岡山県自然保護センター, 主任研究員
吉川 賢 岡山大学, 農学部, 教授 (50166922)
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Keywords | アカマツ / 里山 / 更新 / 実生 / マツ材線虫病 / 下刈り / 瀬戸内海沿岸 / 水分生理 |
Research Abstract |
前年度に引き続き,岡山県佐伯町の岡山県自然保護センター内でマツ材線虫病被害を受けているアカマツ林を研究対象林分として,その修復保全手法を検討した。前年度に,対象林分で亜高木層以下の個体を対象として下刈りを行う下刈り区とその対照区を設定し,それぞれの処理区で土壌のAO層除去区,リター層除去区,およびAO層残存区を設定した。今回特にアカマツ林の再生を目指してアカマツ個体群の動態を解析するため,残存するアカマツ林冠木の成長と林床におけるアカマツ実生の定着にそれらの処理が与える影響を検討した。 残存するアカマツ林冠木の肥大成長をアルミバンド式デンドロメータによって調査したところ,下刈り区と下刈りしていない対照区で季節変化に違いがみられ,対照区では降雨が少ない時期に成長が停滞したのに対して,下刈り区では停滞しなかった。年間の相対成長量を比較したところ,下刈り区のほうが有意に大きかった。以上から,下刈り処理によって,残存するアカマツ林冠木は他樹種による被圧から解放され,水分や養分を得やすくなり成長が促進されたことが示唆された。 アカマツ実生の定着を検討したところ,実生の発生率は,下刈り処理によって増加し,かつ有機物除去によって増加した。発生後の生残率では,下刈りにより林内の光強度が高い場合に明らかに生残率が高く,対照区では実生が夏季までにすべて死亡した。下刈り区では,有機物層を除去した処理区において生残率が高かった。実生の死亡率は発生後3週間から4週間までが著しく高かった。この時期には,有機物層残存区の実生は根系を有機物層内にしか発達できておらず,有機物残存区の実生は有機物層内の菌害あるいは乾燥害を受けやすいため,死亡率が特に高いことがわかった。 以上から,下刈り,および林床の有機物層除去という処理によって,残存するアカマツ林冠木の成長とアカマツの更新が促進されることが明らかになった。
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