2002 Fiscal Year Annual Research Report
真核生物におけるD-アスパラギン酸の生理機能解明:酵母から哺乳動物への展開
Project/Area Number |
14560064
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉村 徹 京都大学, 化学研究所, 助教授 (70182821)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三原 久明 京都大学, 化学研究所, 助手 (30324693)
栗原 達夫 京都大学, 化学研究所, 助手 (70243087)
江崎 信芳 京都大学, 化学研究所, 教授 (50135597)
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Keywords | D-アミノ酸 / N-アセチル-D-アミノ酸 / D-アミノ酸 N-アセチルトランスフェラーゼ / 分裂酵母 |
Research Abstract |
分析技術の進歩に伴い、真核生物にも種々の遊離D-アミノ酸が存在することが報告されている。しかし、D-Serが哺乳動物の脳においてN-メチル-D-アスパラギン酸受容体のアゴニストとして作用するという知見を除けば、真核生物でのD-アミノ酸の役割はほとんど分かっていない。われわれ真核細胞でのD-アミノ酸の生理的意義を明らかにする目的から、酵母におけるD-アミノ酸代謝関連酵素について検索し、出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeの機能未知遺伝子、hpa3がS. cerevisiaeに特有な酵素であるD-アミノ酸N-アセチルトランスフェラーゼ(D-NAT)をコードすることを見いだした。本年度はこのD-NATの生理的意義について研究した。 S. cerevisiaeの生育は種々のD-アミノ酸により阻害された。例えば0.1mMのD-Met存在下では、非存在下と比べ約24時間の生育遅延が起こった。同条件下でのhpa3破壊株の生育は、野生株の場合よりもさらに48時間程度遅くなった。これに対しプラスミド上でhpa3を発現させた場合には、hpa3破壊株の生育速度は野生株と同程度まで回復した。D-NATを過剰発現させたS. cerevisiaeをD-Phe存在下で培養したところ、培地中にN-acetyl-D-Pheが蓄積したが、D-PheとN-acetyl-D-Pheの総量は変化しなかった。以上の結果から、N-acetyl-D-PheがS. cerevisiaeにおけるD-Phe代謝の最終産物であること、また菌体内に取り込まれたD-PheはD-NATによってN-アセチル化され、菌体外へ放出されることにより、その毒性が軽減されることが示唆された。
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[Publications] Watanabe, A.: "Reaction mechanism of alanine racemase from Bacillus stearothermophilus : X-ray crystallographic studies of the enzyme bound with N-(5'-phosphopyridoxyl)-alanine"J. Biol. Chem.. 277. 19166-19172 (2002)
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[Publications] Uo, T.: "Gene coning, purification, and characterization of 2,3-diaminopropionate ammonia-lyase from Escherichia coli"Biosci. Biotechnol. Biochem.. 66. 2639-2644 (2002)