2002 Fiscal Year Annual Research Report
大腸内酪酸濃度の制御による実験的大腸炎の抑制効果とその作用機序の解析
Project/Area Number |
14560097
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
森田 達也 静岡大学, 農学部, 助教授 (90332692)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉山 公男 静岡大学, 農学部, 教授 (00126781)
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Keywords | 難消化性デンプン / 短鎖脂肪酸 / 大腸炎 / IgA / ムチン |
Research Abstract |
難消化性デンプン(RS)は、極端に味覚を損なうことなく食品へ添加することが可能である。大腸に流入したRSは腸内細菌によって効率よく短鎖脂肪酸(SCFA)に変換されるが、SCFAは大腸上皮細胞のエネルギー源であると同時に、腸管免疫の修飾による抗炎症作用を示すと考えられている。平成14年度の本研究助成により、RSの摂取は、TNBS(トリニトロベンゼンスルホン酸)誘発ラット大腸炎モデルに対して劇的な予防効果を示すことを見い出した。効果の判定には、潰瘍部面積、単位長あたりの結腸組織重量および結腸組織中のミエロペルオキシダーゼ活性を測定した。15または30%RS添加飼料をあらかじめ10日間摂取したラットでは、TNBS投与8日後の障害像を用量依存的に有意に抑制していた。TNBS投与直前のRS摂取群ではSCFAによる大腸粘膜組織の肥厚化(粘膜重量、タンパク質、核酸含量の増加)に加え、消化管内IgAおよびムチン分泌量の亢進が認められた。また、RS摂取群の遠位結腸内でのEvans-blue透過性は、対照飼料群に比べ有意に低下していた。これらの結果は、RS摂取が大腸粘膜のバリア機能を増強し、障害部位からのバクテリア透過を抑制することによってTNBS大腸炎を軽減することを示唆している。TNBS投与8日後の大腸炎症部位および門脈血中の炎症性サイトカイン(TNF-α、IFN-γ)濃度は群間で差が認められなかったが、RS摂取群のIL-10濃度は対照群に比べ高値を示す傾向にあった。次年度はRSに加えレジスタントプロテインを組み合わせた飼料条件により大腸内酪酸濃度を制御した試験系を設け、TNBS大腸炎に対する予防および治療効果を解析する。
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