Research Abstract |
【目的】オーラプテン(Aur)はクマリン系化合物の一種で,特定の柑橘果皮に局在している。Aurの生理作用には,発ガン抑制や活性酸素の生成抑制が知られており,発ガン抑制機構は解毒酵素群の誘導による発ガン物質の排泄促進,活性酸素産生系の抑制による酸化ストレス軽減などの複合的な機能によることが明らかになりつつある。昨年度の実験において,ラットにおけるAur摂取による,白色脂肪組織重量の低下傾向,血清トリグリセリド濃度の有意な減少,血清TNF-α濃度の上昇傾向および脾臓細胞のNK活性の低下傾向が確認された。これらの結果より,Aurの摂取は脂肪組織の代謝に好ましい影響を与え,免疫調節機構についても何らかの影響を及ぼすことが推察された。そこで本年度は,昨年度の精製法を改良して得られた高純度のオーラプテン標品を用い,免疫指標に焦点を当て,ラット脾臓リンパ球の免疫指標に及ぼす影響を把握することを目的とした。【方法および結果】甘夏果皮より調製した高純度のAur標品を用い,ラット脾臓リンパ細胞培養液中にAurが終濃度0.01,0.1,1.0および10μg/mlとなるようDMSOに溶解し添加した。培養時間は24あるいは72時間とし,培養終了後培養上清中のIgA, IL-4,TNF-αおよびIFN-γ濃度を測定した。IgA濃度は培養時間に関係なく,Aur濃度に伴う減少傾向を示した。またPBS添加では培養時間に伴い有意に増加したものの,対照的にDMSOおよびAur添加では減少傾向を示した。IL-4濃度は24時間培養では,Aur濃度0.01,0.1および1.0μg/mlにおいてDMSOのみの添加と比較し有意に上昇したものの,72時間培養によって有意に低下し,Aur濃度依存的に減少する傾向にあった。TNF-α濃度は,Aur濃度による影響は見られなかったものの,培養時間に伴い上昇し,その差はDMSOおよびAur濃度0.01,0.1および10μg/mlにおいて有意であった。IFN-γ濃度に及ぼすAur濃度の影響は一定ではなかった。また培養時間が長くなるとPBSおよびDMSO添加では減少傾向を,一方Aur添加では増加傾向を示した。【結論】Aurが脾臓リンパ球の機能になんらかの影響を及ぼすことが確認された。しかし,免疫機能に及ぼす影響は促進的でも抑制的でもあったことから,明確な結論付けは難しい。Aur添加量によるサイトカインおよび免疫グロブリン産生能に違いが見られたことから,今後至適有効濃度を検討し明らかにすることが必要であろう。
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