2002 Fiscal Year Annual Research Report
高濃度窒素ストレスをモデルとした森林内における植物質分解過程の補償機構の解析
Project/Area Number |
14560112
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
鈴木 彰 千葉大学, 教育学部, 教授 (50110797)
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Keywords | 高濃度窒素ストレス / 植物質分解 / カラマツ / ロッジポールマツ / アンモニア苗 / 高pH / 土壌理化学条件 / かく乱 |
Research Abstract |
カナダ、エドモントン市近郊のロッジポール松林内の尿素施与区(1000g尿素/m^2及び200g尿素/m^2)と対照区に1年間埋設したロッジポール松の木片、葉及び埋設地の土壌を採取した。両尿素処理区のL-F層及びH-A層の土壌のpH及び含水率は対照区の土壌とほぼ等しい値に戻っていた。一方、両処理区のL-F層及びH-A層の土壌のアンモニア態窒素濃度、硝酸態窒素濃度は共に、対照区の土壌よりも高い値を依然示しており、日本の各種森林内での尿素施与の土壌の理化学条件の復帰速度に比べて遅いことが判明した。木片、葉共に尿素施与による分解率の低下は認められず、前者で埋設前の約15%、後者で埋設前の約30%の乾重の減少がみられた。以上から、ロッジポールマツ林では、高濃度窒素ストレスによる植物質分解過程の補償作用が十分であることが推察された。長野県野辺山のカラマツ林内の尿素施与区(1600g尿素/m^2及び160g尿素/m^2)と対照区に3年間埋設したカラマツ林の木片、葉及び埋設地の土壌を採取した。尿素施与地のL-F層及びH-A層の土壌のアンモニア態窒素濃度、硝酸態窒素濃度、pH、含水率は共に、対照区の土壌のこれらの測定値と有意差のない状態に戻っていた。木片の分解率は対照区のものが最も高く、重量減少は60%を超えていた。一方、葉の分解は尿素濃度が高いものほど高かった。木片、リター共に、尿素処理直後半年間の同処理の影響が、土壌理化学条件の尿素処理前に復帰した後もそのまま残存していた。カラマツ林では、高濃度窒素ストレスによるセルロース分解の補償作用は極めて高いが、リグニン分解の補償作用は十分でないことが判明した。 以上のことから、高濃度窒素ストレスによる植物質分解過程の補償機構は、植生によって異なることが示唆された。
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