2002 Fiscal Year Annual Research Report
持続的経営林としての帯状複層林の可能性評価と動態予測
Project/Area Number |
14560122
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
溝上 展也 宮崎大学, 農学部, 講師 (00274522)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 昭夫 鳥取大学, 農学部, 助手 (80304202)
伊藤 哲 宮崎大学, 農学部, 助教授 (00231150)
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Keywords | 小面積皆伐 / スギ、ヒノキ / 針葉樹人工林 / 帯状伐採 / 群状伐採 / 林縁 / 生物多様性 / 収益性 |
Research Abstract |
本研究の目的は、樹高程度の帯幅で伐採が行われる帯状・群状複層林の成長、収益性、生物多様性を従来の一斉林や二段林と比較しながら明らかにし、持続的経営林としての可能性を議論することにある。 まず、宮崎県諸塚村と大分県湯布院町にある帯状伐採後約30年経過したスギもしくはヒノキの帯状複層林の成長特性を調査した。下木のサイズは林縁から離れるほど大きくなる傾向があったが、林縁距離約5m以上でほぼ一定になることが分かった。上木の樹幹解析資料や一斉林の調査データを用いて一斉林の成長と帯状林下木の樹高成長を比較したところ、帯状林植栽木の樹高は少なくとも伐採帯中央では一斉林と同等であることが示唆された。また、林縁距と形状比との間には有意な相関はみられず、その平均値は70〜80であり、一斉林の平均的な値に近いことがわかった。 次に、これらの知見をもとに、相対化の手法を用いて成長モデルを作成し、長伐期および短伐期一斉林、二段林、帯状林の林分動態および収益性を比較した。その結果、帯状林は他の林型と比較して材積成長の面からは優位とはいえないことが分かった。二段林や短伐期一斉林は材積成長は大きいものの育林費用が高いため収益性が悪く、一方、帯状林の収益性は長伐期一斉林に次いで高いことが分かった。すなわち、帯状林では下刈省略化の可能性も期待できることから、収益性の面で優れていると推察された。 続いて、宮崎県椎葉村にある群状伐区内の光環境と幼齢木の樹高成長を調査した。その結果、伐区面積が大きい場合には、伐区中央では過剰な日射量により、樹高成長が落ち込むかもしれないという仮説を提示した。 さらに、大分県湯布院町にある伐採後37年経過した群状林を調査し、伐区中央の樹高成長は一斉林と同程度であること、林縁付近の樹高低下は南北方向よりは東西方向で大きいこと、隣接地の伐採により成長は改善されることを明らかにした。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 山下健一, 溝上展也, 井上昭夫, 伊藤哲, 加賀英昭: "群状伐採後37年経過じた複層林の林分構造-大分県湯布院町での事例-"第114回日本林学会大会学術講演集. (印刷中). (2003)
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[Publications] Inoue, A., Yamamoto, K., Mizoue, N., Kawahara, Y.: "Estimation of relative illuminance using digital hemispherical photography"Journal of Forest Planning. 8. 67-70 (2002)
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[Publications] 溝上展也, 伊藤哲, 井剛: "宮崎県諸塚村における帯状複層林のスギ・ヒノキ下木の成長特性"日本林学会誌. 84・3. 151-158 (2002)
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[Publications] 溝上展也: "堺正紘編著、「森林資源管理の社会化」第17章 持続可能な育林技術-帯状複層林の可能性-"九州大学出版会. 358 (2003)