2004 Fiscal Year Annual Research Report
自発摂餌を利用した魚類の性質および社会性に関する研究
Project/Area Number |
14560147
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
神原 淳 三重大学, 生物資源学部, 教授 (90183334)
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Keywords | 自発摂餌 / 学習 / ヒエラルキー / 社会性 / キンギョ / ブルーギル |
Research Abstract |
「自発摂餌」は魚類の社会性を研究するための有効なツールである。すなわち、スイッチのある場所はよい餌場と認識され、この餌場をめぐる競合を経て、集団の中で順位制(社会的ヒエラルキー)が生じるような場合、自発摂餌行動を指標としてこれを解析できる可能性がある。そこで、その生態から社会性が大きく異なると予想されるブルーギルとキンギョを自発摂餌により飼育し、スイッチ引き行動と餌摂取量(成長)を基にそれぞれの社会性の特徴について検討した。 標識した2尾2組を同時並行的に自発摂餌装置を備えた別々の水槽内で飼育し、ビデオ撮影によって各個体のスイッチ引き行動と餌(ペレット)摂取量を調べた。順位が生じた場合には優位な個体同士、劣位な個体同士を再度競合させた。また、3尾の集団についても順位の検討を行った。さらにPIT-tagを用いた自発摂餌個体識別システムを開発し、多数個体集団(6〜16尾)で長期間飼育の場合についても検討した。 2尾競合実験においては、両魚種ともにスイッチ引きに関与する個体と関与しない個体が現れた。これは、自発摂餌行動に関わる学習能力には個体ごとに差があり、それが自発摂餌の繰り返しで強化されたことにより、関わりの差が著しくなったものと考えられた。また、いずれもスイッチ引きに関わる個体が多くのペレットを摂取していた。一方、キンギョでは、スイッチ引きを行わない個体でもある程度のペレットを摂取でき成長も見られたのに対し、ブルーギルでは、スイッチ引きを行わない個体はペレットをほとんど摂取できず体重も減少した。また、スイッチ引きに関わる優位個体が劣位個体をスイッチ周辺から追い払うような攻撃行動がみられた。したがって、ブルーギルでは自発摂餌に関わる学習の差と攻撃行動が相補的に作用することによって強い社会的順位が生じ、劣位個体が全くペレットを摂取できない状況が生じたものと考えられた。一方、キンギョでは自発摂餌に関わる学習の差が反映されているだけで、社会的順位は存在しない可能性が示唆された。3尾実験においても類似した結果が得られた。PIT-tagで識別を行った多数個体の集団の場合も、スイッチ引きに高頻度で関わる個体とそうでない個体が観察された。また、両魚種ともに、概してスイッチ引きに関わる個体の成長は良かったが、ブルーギルの場合でもスイッチ引きに関与しない個体が高い成長を示す場合が見られた。この原因として、個体数が増えたことにより、優位個体の劣位個体に対する抑圧が十分に行き渡らず、劣位個体でも横取り的にペレットを摂取できる確率が増えたためと推察された。
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