2003 Fiscal Year Annual Research Report
海洋動物プランクトン、特にカイアシ類の寄生生物の分類・生態に関する研究
Project/Area Number |
14560151
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
大塚 攻 広島大学, 大学院・生物圏科学研究科, 助教授 (00176934)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
洲崎 敏伸 神戸大学, 理学部, 助教授 (00187692)
堀口 健雄 北海道大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (20212201)
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Keywords | 寄生虫 / 宿主 / 動物プランクトン / アミ類 / カイアシ類 / 等脚類 / 繊毛虫 / アキアミ類 |
Research Abstract |
瀬戸内海及びその他の海域で動物プランクトンの寄生生物の分類及び生態について以下のような新知見を得た。 瀬戸内海産アミ類Siriella okadaiの雌の育房内に寄生し、その卵を食するカイアシ類の分類学的検討を行った結果、本邦では正式な記録がないNicothoidaeに属する未記載属であることが判明し、記載を行った。成体雌雄、コペポディッド幼体がアミ類の育房から発見された。寄生率を1年間調査した結果、2003年6月に最高約9%に達した。同所的に、同宿主の育房内には寄生性等脚類のProdajus sp.(新種の記載と発生段階の論文を投稿中)も寄生するが、宿主の卵を巡る資源競争があると推定される。なお、等脚類の寄生率が高い時期には宿主育房内にはカイアシ類が見られないこともわかった。 瀬戸内海産浮遊性カイアシ類に付着する隔口類繊毛虫Vampyrophrya pelagicaのtrophontを電子顕微鏡で観察したが、細胞先端に大きな細胞口が存在するので飲作用でカイアシ類の組織などを摂食しているのではないと考えられる。また、phorontが付着するカイアシ類をヤムシ類などの肉食者が捕食することがこの繊毛虫の生活史を完結させる上で重要であると示唆されているが、稚仔魚(アユを使用)の捕食の関与についても実験を行った。しかし、繊毛虫はカイアシ類とともに消化されてしまい、消化管の内部でphorontからハッチすることはなかった。沖縄の沖合及びスールー海の深海近底層から発見された肉食性及びデトリタス食性カラヌス目カイアシ類の付属肢にも隔口類繊毛虫のphorontが付着していることが確認された。浅海のみならず深海においても、これらの繊毛虫の食物連鎖における機能を評価する必要があろう。 韓国南部沿岸域からヤムシ類Sagitta crassaに外部寄生する渦鞭毛藻類Oodinium inlandicumを発見した。日本の瀬戸内海に次いで2番目の出現記録となる。 その他、カイアシ類、アキアミ類、アミ類などの寄生生物を探索する過程で、それらの生物学的な新知見を見いだしたので公表を行った。また、プランクトンとして出現する寄生性カイアシ類の分類学的研究も行った。
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Research Products
(10 results)
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[Publications] Ohtsuka, Susumu: "Intersex in the mysid Siriella japonica izuensis Ii : the possibility it is caused by infestation with parasites"Plankton Biology and Ecology. 50・2. 65-70 (2003)
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[Publications] Ohtsuka, Susumu: "A new species of Neoscolecithrix (Crustacea ; Copepoda ; Calanoida) from off Okinawa, southwestern Japan, with comments on the generic position in the superfamily Clausocalanoidea"Bulletin of the National Science Museum, Tokyo, Series A. 29・2. 53-63 (2003)
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[Publications] Ohtsuka, Susumu: "New record of Centropages brevifurcus (Crustacea : Copepoda : Calanoida) from the Gulf of Thailand and its full redescription"Species Diversity. 8. 67-78 (2003)
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[Publications] Ohtsuka, Susumu: "A new species of Tortanus (Atortus) (Copepoda : Calanoida : Tortanidae) from Rodrigues Island, Mauritius"Journal of the Marine Biological Association of the United Kingdom. 38. 355-360 (2003)
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[Publications] Ohtsuka, Susumu: "Ergasilid copepods (Poecilostomatoida) in plankton samples from Hokkaido, Japan, with reconsideration of the taxonomic status of Limnoncaea Kokubo, 1914"Journal of Natural History. 83. 471-498 (2004)
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[Publications] Hanamura, Yukio: "Occurrence of intersex individuals in the sergestid shrimp, Acetes sibogae, in Darwin Habour, Northern Territory, Australia"Crustaceana. 76・6. 749-754 (2003)
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[Publications] Ohtsuka, Susumu: "A new species of the deep-sea copepod genus Scutogerulus (Calanoida : Arietellidae) from the hyperbenthic waters of Okinawa, Japan"Bulletin of the Natural History Museum (Zoology Series). In press.
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[Publications] Ohisuka, Susumu: "The idenlity of Limnoncaea diuncata Kokubo, 1914 (Copepoda : Poecilostomatoida) from Hokkaido, Japan, with the relegation of Diergasilus Do, 1981 to a junior synonym of Thersitina Norman, 1905"Systematic Parasitology. In press.
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[Publications] 大塚 攻: "日本から記載されたリムノンケア属Limnoncaeaカイアシ類の正体-プランクトン学と寄生虫学の複合領域的研究の必要性"日本プランクトン学会報. (印刷中).
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[Publications] 大塚 攻, 堀口 健雄: "フィールドの寄生虫学:4章「奇怪な寄生虫-ヒメヤドリエビとその驚くべき生活史」(大塚分担執筆);7章「寄生性ウズベン学事始め」(堀口分担執筆)(長澤和也編著)"東海大学出版会出版. 56-56, 97-107 (2004)