2002 Fiscal Year Annual Research Report
植民地朝鮮における河川開発事業と農村社会―萬頃江を対象として―
Project/Area Number |
14560180
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松本 武祝 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (40202329)
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Keywords | 植民地朝鮮 / 河川開発 / 水利組合 / 万頃江 |
Research Abstract |
本年度の研究成果を挙げると、下記の通りである。 1)植民地朝鮮における水利事業および河川開発事業に関する研究史をサーベイして、データベースを作った。必要な論文は入手して研究史の整理を行った。その結果、個別の水利事業については、その設立過程や運営の実態に関していくつかの実証的な研究がなされていることが確認できたが、水利組合間の関係を問題にする視点が弱く、したがって、ひとつの水系レベルでの「河川開発」という文脈での位置付けが必ずしもなされてきていないことが確認できた。 2)対象地域を韓国全羅北道の万頃江に設定した。当該地域に位置する大規模水利組織である全北農地改良組合に所蔵されている、植民地期の1次資料を閲覧して、重要と思われるものは複写を行った。 3)入手した1次資料に目を通して、とくに重要な項目に関してはノートを作成した。また、必要に応じて簡単なデータベースを作成し、統計処理を行った。全北農地改良組合の前身であるいくつかの水利組合に関して、その組合員名簿、評議会会議録、諸契約書綴などが、当時の実情を知る上では貴重な資料であることがわかった。また。水利組合内部の事情だけでなく、組合周辺区域と対立関係、対立の調停過程など、興味深い新たな論点も浮上してきた。 4)以上の作業を踏まえて、旧韓末から1940年代に至る万頃江流域の農業水利開発に関するモノグラフを執筆中であり、近日中に学会誌に投稿する予定である。
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