Research Abstract |
界面活性剤は,洗剤・シャンプー・肥料や農薬の添加剤として利用され,多量に環境中へ放出されている.そのため,土壌環境中への影響も懸念される.ここでは,アニオン界面活性剤が土壌への水浸潤に及ぼす影響を明らかにするため,種々濃度のドデシル硫酸ナトリウム溶液(SDS)を乾燥試料カラムに毛管浸潤させ,その浸潤前線の変化を測定した. まず,砂・ガラスビーズの無機物と,腐葉土・ピート・ポリエチレン粒子の有機物を試料として,毛管上昇浸潤試験を行い,各試料の浸潤特性を明らかにした.純水を浸潤させたところ,毛管上昇高は,水との親和性を示す接触角の小さい順に対応して,ガラスビーズ>砂>腐葉土>ピート>ポリエチレン粒子の順に高くなった.700mmol/lの高濃度SDS溶液の毛管上昇高は,腐葉土を除いて,無機物・有機物とも溶液との接触角に大きな差がないことを反映して,類似した実験結果となった.これは,界面活性剤による有機物表面の水との親和性増大に起因する.腐葉土は,活性剤添加に伴い膨潤率が増大して透水性が大幅に低下し,浸潤が抑制された.ダルシー則を用いた浸潤方程式を提案し,浸潤初期の毛管上昇が,この式で近似出来ることを明らかにした. この計算毛管上昇式を用いてSDS溶液の影響を明確にした.親水性無機試料のガラスビーズ・砂では,SDS濃度増加に伴い,溶液の表面張力低下のため浸潤が遅くなった.疎水性有機試料のポリエチレン粒子・ピートでは,SDS濃度増加に伴い,主に前進接触角減少のため浸潤が速くなった.腐葉土では,SDS濃度増加に伴い浸潤が遅くなった.これは,高濃度になると膨潤性が増し,透水性が低下したためと推測された.
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