Research Abstract |
熱帯・亜熱帯地域の草地における高位生産型放牧システムの開発と窒素動態を解明するため,我が国南西諸島をモデル地域として,肉用牛を対象に調査した。八重山地域で行った試験Iでは,本地域のこれまでの牧養力(3頭/ha/年)を,約2倍(6.7頭)に高めることが可能であることが実証された。これらの結果は休牧期間を30日とする輪換放牧様式,退牧後の適切な窒素施肥が重要であると考えられた。本地域の放牧地の基幹草種であるジャイアントスターグラスの生産性を高める適正で効率的な窒素管理方法を検討した結果,刈取りあるいは退牧ごとの窒素施肥は0.5kgN/aが好ましいことが示唆された.次に,強放牧および弱放牧の2水準の放牧強度(4.4頭/ha,6.9頭/ha)が本地域のジャイアントスターグラス放牧草地における施肥窒素の植物体利用効率を含む窒素動態について^<15>N標識窒素を用いたトレーサー試験を実施し,次の結果を得た。すなわち,ジャイアントスターグラス放牧草地における収穫部(採食部)の^<15>N回収率は,いずれの条件でも最寒月(1-2月)で15-17%と低く,4-5月で43%と最も高くなった。年間の部位別の^<15>N回収量を比較すると,弱放牧では根<残株<収穫部<根圏土壌の順で高く,強放牧では根<残株<根圏土壌<収穫部の順で高くなり,強放牧によって施肥窒素が効率的に採食に利用されることが示唆された。 本島北部で行った試験IIでは,ジャイアントスターグラスとパンゴラグラスをそれぞれ基幹草種とする放牧草地を造成し,両放牧草地で試験Iと同水準の追肥を行い,牧養力と施肥窒素の利用効率を比較した。その結果,ジャイアントスターグラスの牧養力は6.7頭/ha/年,パンゴラグラスの場合では5.9頭/ha/年であった。また,^<15>N回収率からみた採取部(摂取部)の施肥窒素の利用効率は,冬季で11-15%,4-5月で34-36%,夏季では約30%となり,八重山地域での試験Iと同様の値であった。また,15N回収量は両草地共に,根,根圏土壌<残株<収穫部の順となり,八重山地域での試験Iと異なる利用様式となり,両草地で比較すると,ジャイアントスターグラスで40%,パンゴラグラスでは38%と差異は認められなかった。本研究で行った集約的輪換放牧様式によって,慣行的放牧による牧養力の約2倍の値が得られた。また,適正窒素施肥の50-60%は系外に出ることが示された。
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