2003 Fiscal Year Annual Research Report
核外遺伝子による家畜経済形質発現の遺伝的制御機構解明
Project/Area Number |
14560238
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
野村 こう 東京農業大学, 農学部, 講師 (60277241)
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Keywords | ミトコンドリアDNA / 沼沢水牛 / 河川水牛 / 野生水牛 |
Research Abstract |
沼沢水牛と河川水牛は同一種とされながらその用途は役用と乳用に特化し、経済形質が大きく異なる。また水牛は改良牛の多くに欠落している耐暑性、抗病性、特にBSEに対する非感受性の観点から最近再び注目されている。そこで水牛の核外遺伝子が形質発現に及ぼす影響について考察するために、家畜水牛である河川水牛と沼沢水牛および野生水牛の全mtDNA配列を解読した。 mtDNA全塩基数は沼沢水牛が16,355bp、河川水牛が16,357bpであった。また沼沢水牛内の塩基置換率は0〜2.61%、河川水牛内の塩基置換率は0〜1.73%で、沼沢水牛が河川水牛に比較して遺伝的多様性を持つことが示唆された。両者間に見られた塩基数の差はアミノ酸やtRNAをコードしないコントロール領域に起因するもので、コントロール領域は塩基置換率も全領域中最高であった。アミノ酸配列の相同性は領域により90.9〜100%で、ND4およびND5領域の相同性が低く、ATPase8、CO1、CO2、ND3およびND6領域の相同性が高かった。各領域のシークエンスダイバージェンスから、沼沢水牛と河川水牛問の遺伝的距離はタウリン系牛とゼブー系牛のそれよりも大きく、少なくとも亜種レベルに相当することが明らかになった。次に野生水牛と家畜水牛の比較のため、スリランカ野生水牛のmtDNA全領域を決定したところ、その塩基数は16,357bpであり、また各領域の比較においても河川水牛との相同性が高かった。そこで分子系統樹を作製したところ、スリランカ野生水牛は河川水牛と同一のクラスターを形成し、家畜水牛のうち河川水牛の野生原種はスリランカ野生水牛に極近縁の種であることが示唆された。また沼沢・河川の家畜水牛とスリランカ野生水牛間ではATPase8領域に1ヶ所のアミノ酸置換が存在し家畜化に関連した変異である可能性が示唆された。
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