2003 Fiscal Year Annual Research Report
冬眠導入時における精巣組織の微細形態学的、分子生物学的解析
Project/Area Number |
14560245
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
九郎丸 正道 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (00148636)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金井 克晃 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (30260326)
林 良博 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (90092303)
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Keywords | コウモリ / ハムスター / 精子発生 / 暗条件 / 精母細胞 / 精子細胞 / アポトーシス / Tunel法 |
Research Abstract |
まず、冬眠動物の1種であるコキクガシラコウモリ精子発生の冬眠時期を含めた季節変化について形態学的に検討した。3月では精細管腔はほとんど認められず、また精上皮はセルトリ細胞と精祖細胞のみから構成されていた。6月では精細管径が拡大し、精細管腔も明瞭に確認された。精上皮には少数ながら精母細胞が認められた。8、10月では活発な精子発生が観察された。冬眠期の12月では精子発生は完全に停止し、精細管径は著しく減少。精上皮はセルトリ細胞と精祖細胞から主に構成されていた。次に冬眠実験の前段階として、長日条件下、短日条件下のハムスター精巣を比較検討した。長日条件下の精巣では活発な精子発生が観察されたが、短日条件下では精子発生は完全に停止していた。 また、TGF-βファミリーの細胞内シグナル伝達因子であるSmad2,3の細胞内局在を免疫組織化学で調べたところ、長日条件精巣では精母細胞の細胞質に、短日条件精巣では精母細胞の核内に局在が認められた。さらに、ハムスターの冬眠後(暗条件、5℃)の精子発生の回復の過程を、非冬眠状態(暗条件、23℃)の対照群と比較した。その結果、対照群では6週後にほぼ精子発生が回復したのに対し、冬眠導入群では、6週後では精母細胞までしか認められず、13週後でも精母細胞に加えて少数の円形精子細胞が観察されるのみであった。さらに16週後では円形精子細胞の数が増大し、18週では伸長型精子細胞が出現したが、最終的に精子発生が回復したのは、20週後であった。このように冬眠導入群では精子発生の回復が、対照群に比べて、著明に遅れることが明らかとなった。TUNEL法を用いた結果、非冬眠群に比べ冬眠群において精母細胞のアポトーシスの有意な増加が、認められたことから、冬眠による精子発生再開遅延は、冬眠時に生じる精母細胞期のアポトーシス増加によるものと推測された。
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