2003 Fiscal Year Annual Research Report
DNAマイクロアレイ法によるダイオキシン発生毒性機構の検討
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14560254
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Research Institution | Rakuno Gakuen University |
Principal Investigator |
寺岡 宏樹 酪農学園大学, 獣医学部, 助教授 (50222146)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
遠藤 大二 酪農学園大学, 獣医学部, 助教授 (40168828)
上野 直人 国立岡崎共同研究機構, 基礎生物学研究所, 教授 (40221105)
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Keywords | ゼブラフィッシュ / ダイオキシン / 発生毒性 / マイクロアレイ / 循環障害 / Ah受容体 / 血管毒性 / CYP1A |
Research Abstract |
初年度において、ダイオキシンの中でも最も急性毒性の強い2,3,7,8-tetrachlorodibenzo -p-dioxin (TCDD)処置されたアフリカツメガエル胚で発現変化が観察された約90の遺伝子についてノーザンブロット法を行ったところ、同様の顕著な変化が確認できたのはチトクロームP450 1A (CYP1A)だけが残った。この結果をふまえて、今年度は以下の研究を展開した。 1)TCDD毒性におけるCYP1Aの関与とその機構:AHR-MO、CYP1A-MOを用いて、それぞれの特異的蛋白転写を阻害し、その影響を観察した。ゼブラフィッシュではAHRがこれまで二種類報告されているが、このうちAHR2-MOはこれまでゼブラフィッシュ胚で報告されている全てのTCDD毒性(浮腫、血流障害、赤血球の成熟、下顎の低形成、中脳背側部のアポトーシス)に対して阻害効果を示した。高濃度TCDDの作用に対しては一部の毒性で回復作用がみられなかったが、gene-knockdownが完全であるかどうかを確かめることができないので、これがAHR2を介さない別経路があることを示すか否かは結論できない。また、AHRノックアウトマウスで報告された一部血管走行の変化はまったく観察されなかった。一方、CYP1A-MOはTCDDによる血流阻害と浮腫を顕著に阻害した。このことはCYP1AがTCDD毒性の指標だけでなく、介在機序として毒性発現にも関与しうることを示唆する。 2)iNOS関与の可能性:われわれのこれまでの成果から、TCDD毒性に酸化ストレスが関与する可能性を薬理学的に得ている。またAHRアゴニストによる血管毒性が誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)を介すという可能性を紹介した総説がある。そこで、ゼブラフィッシュのiNOSをクローニングし、発現に対するTCDDの影響を見たが影響はみられなかった。 3)PCBによる発生毒性:TCDDなどのAHRを介するものとは異なる機構で毒性を発現すると考えられている非オルト型のPCB類の作用を観察した。オルト型PCBは中枢毒性との関連がTCDDタイプよりも明らかにされているが、その作用機構はいまだ不明である。この目的で、arochlor1254をゼブラ初期胚に暴露した結果、受精後24〜30時間にかけてみられる自発的回転運動を有意に増加させた。この作用はTCDDでは再現できず、またarochlor1254はCYP1A発現には影響しない、さらには抗酸化剤が影響しないことなどから、TCDD様のAHR2を介した作用とは全く別の機構によるものと考えられた。Arochlor1254はホスホリパーゼA2に対する活性化作用を持つことが報告されているが、いくつかのPLA2阻害薬はarochlor1254による回転運動増強に全く影響を示さなかった。現在この作用の機序を検討中である。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Teraoka-H, Dong-W et al.: "Induction of cytochrome P450 1A is required for circulation failure and edema by 2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin in zebrafish."Biochem Biophys Res Commun. 304. 223-228 (2003)
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[Publications] Teraoka-H, Dong-W et al.: "Zebrafish as a novel experimental model for developmental toxicology"Congenit Anom Kyoto.. 43. 123-132 (2003)
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[Publications] Prasch-AL, Teraoka-H et al.: "Aryl hydrocarbon receptor 2 mediates 2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin developmental toxicity in zebrafish"Toxicol Sci.. 76. 138-150 (2003)
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[Publications] Dong-W, Teraoka-H.: "Role of aryl hydrocarbon receptor in mesencephalic circulation failure and apoptosis in zebrafish embryos exposed to 2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin"Toxicol.Sci.. 77. 109-116 (2004)
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[Publications] Teraoka-H, Russel-C.: "Hedgehog and Fgf signaling pathways regulate the development of tphR-expressing serotonergic raphe neurons in zebrafish Embryos"J.Neurobiol.. in press. (2004)
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[Publications] Nagahata-H, Higuchi-H.: "Decreased apoptosis of beta2- integrin-deficient bovine neutrophils."Immunol.Cell Biol.. 82. 32-37 (2004)