2004 Fiscal Year Annual Research Report
草食動物消化管内原虫の機能形態ならびに系統に関する複合的研究
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14560255
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Research Institution | Nippon Veterinary and Animal Science University |
Principal Investigator |
今井 壯一 日本獣医畜産大学, 獣医学部, 教授 (90120758)
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Keywords | 原生動物 / 繊毛虫 / 形態 / 草食動物 / 鍍銀法 / カバ / 組織化学 / 系統分類 |
Research Abstract |
本研究の最終年度である本年度は、とくに特徴的な構成をもつカバの前胃内繊毛虫に着目し、それらの草食動物消化管内繊毛虫類における系統的位置とカバ前胃内における役割について検討した。まず、カバの前胃内において優勢に存在するParentodinium属繊毛虫の鍍銀染色を含む詳細な形態学的検討を行った結果、これらは4種に区分できることが明らかとなり、2種を新種として記載した。次に本属繊毛虫の系統学的位置を考察するために、草食動物消化管内繊毛虫の多くを占めるエントディニオモルファ類の各種繊毛虫との口部繊毛下織の比較を鍍銀染色によって行った結果、Parentodinium属は比較したいずれの科とも異なった特徴を有しており、このことから、本属に対してはパレントディニウム科Parentodiniidaeを設定することが適当であると考えられた。さらに、Parentodinium sp.とウマ大腸内から得たCycloposthium bipalmatumのsmall subunit ribosomal DNA(SSU rDNA)の塩基配列を明らかにし、近縁種の配列と比較検討した結果、Parentodinium属繊毛虫は既知のいずれの科とも異なる系統樹が得られた。この結果は、カバ前胃内に優勢に生息する本属繊毛虫が、反芻動物のルーメン内繊毛虫とは異なる系統をもち、独自に分化したものであることを示唆するものであった。 また、カバ前胃内繊毛虫について、組織化学的ならびに電子顕微鏡的観察を行い、それらのカバ前胃内における役割について考察した。カバ前胃内で最も優勢に見られるParentodinium属は体内に多量のデンプン粒を包含しており、その間隙にアミロペクチン様顆粒が認められた。大型の繊毛虫であるMonoposthium sp.では植物片の摂取が観察された。また、これら2種に続いて優勢であったParaisotricha minutaでは体内に多量のアミロペクチン様顆粒が認められた。いずれの繊毛虫も多量の細菌を摂取していた。これらの所見は、カバの前胃内繊毛虫が、反芻動物のルーメン内繊毛虫と同様の役割、すなわち、植物片の分解による易消化化やデンプン粒の貯蔵と分解もしくは可溶性糖類の摂取による胃内のpHの急激な低下の制御を宿主であるカバに対して行っていることを示唆するものであった。
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Research Products
(2 results)