2002 Fiscal Year Annual Research Report
犬の口腔内腫瘍におけるマトリクス・メタロプロテアーゼ(MMP)の発現
Project/Area Number |
14560267
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
中市 統三 山口大学, 農学部, 助教授 (60243630)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宇根 智 山口大学, 農学部, 助手 (60294659)
田浦 保穂 山口大学, 農学部, 教授 (80163153)
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Keywords | MMP-2 / TIMP-2 / MT1-MMP / 犬 / 口腔内腫瘍 / ゼラチンザイモグラフィー / RT-PCR |
Research Abstract |
臨床的に極めて悪性度が高い犬に自然発生した悪性黒色腫、扁平上皮癌、棘細胞性歯肉腫などの口腔内腫瘍を研究対象として腫瘍の浸潤と転移に深く関係すると考えられているマトリクス、メタロプロテアーゼ(MMP-2)について、その活性をゼラチンザイモグラフイーで検討した。ついでMMP-2とその活性発現を調節している活性化因子である細胞膜貫通型MMP(MT1-MMP)、内因性阻害因子(TIMP2)の3種類のタンパクをコードするmRNAの発現をPT-PCR法で検討した。またそれぞれの腫瘍組織タイプにおけるMMP-2/THMP-2 ratioを算出して比較検討した。 ザイモグラフィーによるMMP-2活性の検討では、悪性黒色腫、扁平上皮癌で100%、棘細胞性歯肉腫で25%が陽性を示した。また陽性例中にリンパ節浸潤や遠隔転移を示す例が多数認められた。次にPT-PCR法によってMMP-2,MT1-MMP, TIMP-2のmRNAの発現を検討したところ、これら3種類の因子すべてにおいて、悪性黒色腫や扁平上皮癌といった口腔内の悪性腫瘍において発現量が高い傾向にあったが、それぞれの因子単独では腫瘍組織型の間に有意差は認められなかった。しかしながらMMP-2/TIMP-2 ratioは悪性黒色腫;0.985±0.199、扁平上皮癌;0.780±0.165、棘細胞性歯肉腫;0.510±0.208、正常歯肉組織;0.237±0.112であり、悪性黒色腫、扁平上皮癌では正常歯肉組織に比較して有意に高値を示した。またMMP-2/TIMP-2 ratioとザイモグラフィーによるMMP-2活性の有無には正の相関関係が認められ、口腔内腫瘍においてはリンパ節浸潤、遠隔転移があるものはMMP-2/TIMP-2 ratioが有意に高値を示した。以上の結果より、犬の口腔内腫瘍の浸潤と転移にはMMP-2が関与している可能性が示唆され、MMP-2/THMP-2 ratioによる評価は有用と考えられた。今後は症例数を重ね、in situ hybridyzationによる局在性の検討を加える予定である。
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