2003 Fiscal Year Annual Research Report
犬の口腔内腫瘍におけるマトリクス・メタロプロテアーゼ(MMP)の発現
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14560267
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
中市 統三 山口大学, 農学部, 助教授 (60243630)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宇根 智 山口大学, 農学部, 助手 (60294659)
田浦 保穂 山口大学, 農学部, 教授 (80163153)
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Keywords | MMP-2 / MMP-9 / 犬 / 口腔内腫瘍 / 肥満細胞腫 / ゼラチンザイモグラフィー / RT-PCR / in situ hybridyzation |
Research Abstract |
犬の口腔粘膜や皮膚に発生する肥満細胞腫を対象として、MMP-2、MMP-9、およびそれらの抑制因子であるTIMP-2、TIMP-1の発現を、ザイモグラフィーとRT-PCRによって検討を行った。またそれらの局在をin situ hybridyzationを用いて検討した。また肥満細胞腫の良性対照としてその他の良性皮膚腫瘍を用いた。 ザイモグラフィーによるMMP-2活性の検討では材料全体で高率に陽性を示し、肥満細胞腫で72.2%、その他の皮膚腫瘍で81.8%であった。またMMP-9活性は肥満細胞腫で66.6%、その他の皮膚腫瘍で45.4%で認められ、MMP-2より低値であったが、肥満細胞腫でやや高い活性率を示した。RT-PCRによるMMP-2,MMP-9のmRNA発現量の検討では、いずれも肥満細胞腫において著しく高い発現が認められた。これらのことから犬の肥満細胞腫における浸潤などに関連した悪性度の高さには、MMP-2あるいはMMP-9が関与している可能性が示唆された。しかしながらMMP-2,MMP-9に対してそれぞれ抑制的に作用するTIMP-2,TIMP-1のmRNAについても、肥満細胞腫で高率に発現していた。腫瘍組織中におけるMMP活性の指標と考えられているMMP-2/TIMP-2比率は、肥満細胞腫におけるTIMPの発現量が高かったため、肥満細胞腫とその他の皮膚・軟部組織腫瘍との間に差は認められなかった。同様にMMP-9/TIMP-1比率においても肥満細胞腫の方がやや低値を示した。In situ hybridyzationでは、MMP-9は血管内皮細胞および腫瘍細胞において発現が認められ、TIMP-1は主に間質細胞に発現しているものと考えられた。 以上の結果より、犬の肥満細胞腫ではMMP-2とMMP-9活性を認める例が高率に存在しており、そのような例ではその他の皮膚・軟部組織腫瘍に比較してMMP-2とMMP-9のmRNAが強く発現していることが明らかになった。しかし肥満細胞腫におけるTIMP1,TIMP2の高レベルの発現については原因が不明であった。その発現部位については十分な結果は得られなかったが、少なくともMMP-9は血管内皮細胞および腫瘍細胞に、またTIMP-1は間質細胞に発現していることが明らかになり、その役割などについてさらに検討が必要と思われた。
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