2002 Fiscal Year Annual Research Report
スクロース高資化性乳酸菌による缶詰シロップ中の複合糖質の同時資化に関する研究
Project/Area Number |
14560284
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Research Institution | Hakodate National College of Technology |
Principal Investigator |
上野 孝 函館工業高等専門学校, 物質工学科, 助教授 (10310963)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中西 載慶 東京農業大学, 短期大学部・醸造学科, 教授 (70172351)
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Keywords | スクロース / 乳酸 / シロップ / 複合糖質 / Lactobacillus paracasei / Lactococcus lactis / 異化代謝物抑制 |
Research Abstract |
1 スクロース高資化性L型乳酸生産菌No.1532株の同定 乳酸菌実験マニュアルに従い、同定試験を行った。また、16SrRNA遺伝子に基づく系統解析を行った結果、No.1532株はLactobacillus paracaseiと共にクラスターを形成し、両菌株の相同値は99.8%であった。以上の表現形質および系統解析結果からスクロース高資化性L型乳酸生産菌No.1532株はLactobacillus paracaseiと同定した。 2 複合糖質におけるLactococcus lactis IFO 12007株とLb. paracasei 1532株の代謝特性 前培養でグルコースまたはスクロースを唯一の炭素源にして、生産培地で2つの糖を5g/lずつ含む複合糖質培地における糖の代謝に関する実験を行った。グルコースで前培養したL. Lactisは培養6時間後にグルコースを消費したが、スクロースは32時間目から代謝され52時間後に消費された。Lb. paracaseiでは、培養9時間後にグルコースが、12時間後にスクロースが消費された。このことからLb. paracaseiはL. lactisと比べてグルコースによるスクロースの異化代謝物抑制がきわめて弱いことが判明した。スクロースで前培養した場合、L. lactisはグルコースの濃度が0.3g/lになるまでスクロースを代謝しなかった。Lb. paracaseiの場合はグルコースで前培養した結果とほとんど変わらなかった。以上の結果から、シロップを実用的な濃度まで高くすると、L. lactisはスクロースで前培養してもスクロースの代謝の開始が遅れ、結果的に乳酸生産時間が長くなることが示唆されたため、以下の実験ではLb. paracaseiを使用することにした。 3 ジャーファーメンターを用いたシロップ中の複合糖質の同時資化による乳酸生産の促進 Lb. paracasei 1532株を用いて20g/lの糖濃度で乳酸生産を行った結果、培養12時間後にグルコースとフルクトースの存在化でスクロースの代謝が始まり、20時間後にスクロースも消費されて18.9g/lの乳酸が生産された。グルコースで前培養したL. lactisの乳酸生産時間と比べると約3分の1に短縮された。100g/lの糖濃度でも同様に、他の糖の存在下で24時間後からスクロースの代謝が始まり、96時間後に消費されて90.2g/lの乳酸が生産された。
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