2002 Fiscal Year Annual Research Report
経リンパ腹水吸収路と腹膜播種性転移機構の形態学的解析
Project/Area Number |
14570018
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Research Institution | 大分医科大学 |
Principal Investigator |
三浦 真弘 大分医科大学, 医学部, 講師 (50199957)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 征治 大分医科大学, 医学部, 教授 (60034956)
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Keywords | 酵素組織化学 / 5'-nucleotidase / Whole-mount preparation / 中皮下リンパ管系 / 骨盤腹膜 / ダグラス窩 / 腹膜播種 |
Research Abstract |
平成14年度は主として「壁側腹膜リンパ管系の起始形態ならびに系統的構築と脈管外通液路の微細構造の解明」を研究目的の核として以下の3課題について調べた。 1)経リンパ腹水吸収路に関係する壁側腹膜リンパ管系の微細構築の解明(特に腹膜播種の好発部位となるダグラス窩と右結腸溝領域を中心とした)。 2)腹膜中皮における乳斑及び篩状斑の脈管外通液路としての構造的特徴について。 3)腹膜中皮から腹膜リンパ管系を経由して経リンパ吸収される腹水の全排導経路の解明。 平成14年度に明らかにされたサル骨盤腹膜リンパ管系に対する研究結果は以下の通りである。 1)剥離伸展標本においてダグラス窩(DP)の前方・外側領域の子宮体部外側縁、ならびにDPの直腸側壁領域に5'-Nase反応強陽性の発達した微細リンパ管網が検索個体間に共通して出現した(酵素組織学的にDP腹膜領域固有のリンパ管系を初めて同定)。右結腸溝腹膜領域には顕著に発達したリンパ管網は出現しなかった。 2)DP前方領域では弁様構造を有する発達した数条の集合リンパ管が出現したが、DP後方では5'-Nase反応陽性リンパ管は顕著に減少した。DP後外側では尿管内側部、更に卵巣間膜周囲で発達したリンパ管網が中皮下に存在した。 3)DP側方領域に出現したリンパ管網は中皮下に浅・深2層の水平方向に拡がる網工を形成していた。浅層のリンパ管網は中皮下結合組織の最表層面に密着してすべて微細な盲端からリンパ管が始まっていた。そしてそれらはその直下に位置する管径の太い弁様構造を有する疎な集合リンパ管網と所々で交通していた。 4)DP前方・外側方のリンパ管網は、子宮・内腸骨静脈所属のリンパ管系と交通する一方、内側中央に走行して直腸前壁漿膜下層に進入して下腸間膜静脈に伴走するリンパ管系を介して体性リンパ管系に合流していた。 5)腹膜腔内へのCH40微粒子活性炭水溶液の注入実験では、注入後短時間では骨盤腹膜面には炭粒子の吸収ならびに黒染したリンパ管網は認められなかった。一方、注入後24時問が経過するとCH40水溶液は腹膜腔内から完全に消失していたが、DP腹膜領域において炭粒子のリンパ管への吸収像は明らかに認められなかった。しかし、DP腹膜表面には直腸に近接した前外側・側方領域に限局して5'-Nase-ALPase反応陽性の両脈管と密接して炭粒子の顕著な吸着現象が認められた。同現象は大網などに見られる脈管外通液路に関連した乳斑様構造と推察された。以上の結果から、サル骨盤腹膜では直腸に近接したDP前方・前外側ならびに側方近位領域においては、主としてDP後方・側方遠位領域と比較して腹水や骨盤内物質の経リンパ吸収能が高いことが推測された。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Miura M., Ji R.C, Shimada H., Kato S.: "Demonstrations of lymphatic networks in monkey pelvic peritoneum during pregnancy : An enzyme-histochemical observation."Lymphology. 35(Suppl.). 71-75 (2002)
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[Publications] 三浦真弘, 紀 瑞成, 下田 浩, 加藤征治: "直腸子宮窩領域の腹膜リンパ管の微細分布とリンパ流"Japanese Research Society of clinical Anatomy. 2. 52-53 (2002)