2003 Fiscal Year Annual Research Report
経リンパ腹水吸収路と腹膜播種性転移機構の形態学的解析
Project/Area Number |
14570018
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Research Institution | OITA UNIVERSITY (FACULTY OF MEDICINE) |
Principal Investigator |
三浦 真弘 大分大学, 医学部, 講師 (50199957)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
紀 瑞成 大分大学, 医学部, 助手 (60305034)
加藤 征治 大分大学, 医学部, 教授 (60034956)
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Keywords | 酵素組織化学 / 5'-nucleotidase / 骨盤腹膜 / 腹膜播種 / MKN-45-P癌細胞株 / Whole-mount preparation / 中皮下リンパ管系 / 新生リンパ管 |
Research Abstract |
平成15年度は主として「ヌードマウスMKN-45-P癌細胞株移植実験と骨盤腔領域の壁側腹膜リンパ管系の徴細分布を含む基本構築ならびに脈管外通液路の微細構造の解明」を研究目的の核として以下の3課題について調べた。 1.経リンパ腹水吸収路に関係する壁側腹膜リンパ管系の微細構築のリンパ流路の解明。 (特に"腹膜播種"の好発部位となるダグラス窩・右結腸溝領域を中心として) 2.腹膜播種性転移機構(MKN-45-P移植)とそれに関わるリンパ管の形態学的特徴の解明。 3.癌種細胞の増殖(MKN-45-P移植)にともなう新生リンパ管網の発達様式の解明。 平成15年度に明らかにされた研究結果は以下の通りである(ただし、「研究課題3」のMKN-45-P癌細胞株移植にともなう新生リンパ管の形態学的解折については、癌細胞株の培養継代後、複数のヌードマウス腹腔内にてさらに継代増殖させた最終癌細胞株が、本実験移植前に、他の研究室員の不注意からすべての細胞株が破棄させられたことから、whole-mount試料を中心とした新生リンパ管の発達様式、およびのその形態学的解折を腫瘍形成との閲係を含めて申請期間中に行うことができなかった)。 1)正常ヌードマウスのwhole-mount組織伸展試料では、5'-Nase陽性のリンパ管網はサルと比較して酵素活性が低く伸展組織でのリンパ管網の描出は困難であった。しかし、OCT凍結組織では、5'-Nase, ALPase染色とも切片において弱陽性反応ながらリンパ管・動脈性毛細血管ともにLM観察が可能なレベルで描出できた。 2)ヒト胃癌MKN-45-P細胞株を6週令の雌ヌードマウスに移植して腹膜播種モデルの作製を試みた。癌細胞は腹膜腔内に5mlの癌細胞浮遊液として注入し、注入後約3〜4週間で腹水の発生をみた。実験8例中6例では皮下腫瘍を生じたものの3代目では明らかな腹水型の腹膜播種を形成しなかった。 3)癌細胞株注入において腹膜播種を生じた8例中2例において、ダグラス窩領域の中皮下結合組織内における5'-Nase陽性リンパ管網の描出はwhole-mount試料では2例ともリンパ管内皮の酵素活性が低いためか染色性に乏しかった。そのため、中皮下リンパ管の微細分布と腫瘍との形態的関係をLMで明らかにすることはできなかった。 4)壁側腹膜に散在する結節状の腫瘍組織のOCT凍結切片法において新生リンパ管を証明する染色像を認めることができなかった。しかし、ALPase陽性血管については、骨盤腹膜領域および腫瘍内のいずれの場所においても明らかな増加が認められた。 5)サルダグラス窩(DP)領域の骨盤腹膜の前方・前外側領域、ならびに子宮体部外側縁、さらににDPの直腸側壁領域に5'-Nase反応強陽性の局所的なリンパ管網が検索個体間に共通して発達していた。とくに、DPの直腸側壁領域に描出されたリンパ管網は、同領域の中皮下結合組織層において浅深2層に水平方向に広がる発達した二重のリンパ管網を呈しており、これらの特徴は腹膜播種性転移の好発部位とも一致した(酵素組織学的にDP腹膜領域固有の2重リンパ管網の形態的特徴を初めて同定)。二重リンパ管網の起始部の形状は樹状に広がったリンパ管先端部が嚢状の盲端を呈していた。 6)腹腔内CH-40微粒子活性炭水溶液注入実験において、炭粒子のDP腹膜部位の局所的沈着によって乳斑様構造がサル骨盤腹膜上の4)の領域に一致して散在して認められた。同部位の中皮下結合組織には横隔膜領域に見られるような篩状斑(macula cribriformis)に類似した膠原細線維間の小孔(stomata)が認められた。子宮体外側縁では中皮下結合組織内の膠原線維束間隙から盲端リンパ管が中皮最表層面に接する所見が認められた。 7)CH-40注入実験において、腹膜播種好発部位の1つとされるサル右結腸溝腹膜領域には検索全例5'-Nase陽性リンパ管網に明らかな炭粒子吸着は認められなかったが、骨盤領域では、直腸腹側漿膜下リンパ管系を介して下腸管膜リンパ管系へ流れる経路、DP前方・側方リンパ管網を介して尿管・卵巣静脈と内腸骨静脈に伴走する体性リンパ管系へ流れる経路、またDP前方、前外側方は子宮・卵巣領域の固有のリンパ管系に合流して一般体性リンパ管に流れる3方向のリンパ路が、骨盤腹膜領域のリンパ路として日本ザルにおいて認められた。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 三浦真弘, 紀 瑞成, 加藤征治: "Morphological features of the initial portion of the intramural lymphatic vesscls in the large intestines : An enzyme-histochemical and electron microscopic observation"Japanese Research Society of Clinical Anatomy. 3. 48-49 (2003)
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[Publications] Miura M., Ji R.C, Shimoda H., Kato S.: "Demonstration of lymphatic networks pelvic peritoneum during pregnancy : An enzyme-histochemical observation"Lymphology. 35. 71-75 (2002)
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[Publications] 三浦真弘, 紀 瑞成, 下田 浩, 加藤征治: "直腸子宮窩領域の腹膜リンパ管の微細分布とリンパ流"Japanese Research Society of Clinical Anatomy. 2. 52-53 (2002)
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[Publications] Miura M., Murakami M., Ji R.C., Gamachi A., Kato S.: "Fine structure and distribution of intramural lymphatic networks in the monkey and human anus-rectal canals"Lymphology. 37. (2004)