2002 Fiscal Year Annual Research Report
フリーラジカルによるラット肝細胞障害の発生機構:細胞内ATP導入による検討
Project/Area Number |
14570035
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
武尾 照子 弘前大学, 医学部, 助教授 (20113813)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
泉井 亮 弘前大学, 医学部, 教授 (80108505)
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Keywords | Ca^<2+>homeostasis / intracellular ATP / nonselective cation channel / oxygen radical |
Research Abstract |
肝移植後に見られる早期機能不全の原因の一つに、虚血再灌流障害の発生があげられ、この過程において細胞内Ca^<2+>濃度([Ca^<2+>]i)上昇が障害発生を助長することが知られている。これまでのラット単離肝細胞に過酸化水素(H_2O_2)を負荷する実験から、H_2O_2は肝細胞の[Ca^<2+>]iをCa^<2+>流入により上昇させること、ミトコンドリア機能障害をもたらし、細胞内ATP産生を抑えることが示された。 今年度は、流入機構についてさらに検討を加え、次の結果を得た。 Ca^<2+>流入が増加する機序として1)Ca^<2+>透過性上昇、2)Ca^<2+>ポンプ抑制、3)Na^+/Ca^<2+>交換系抑制の3つの可能性が考えられる。まず、Ca^<2+>ポンプ阻害薬であるvanadate投与下に400μM H_2O_2を同時投与した場合、[Ca^<2+>]iは上昇し、また、無Na^+溶液灌流下において400μM H_2O_2を投与しても[Ca^<2+>]iの上昇が認められたことから、ポンプおよび交換系関与の可能性は否定された。さらに、whole-cell modeでの細胞膜電流記録からH_2O_2は直接チャネルに作用しないが、ATPの有無により逆転電位およそ0mVのチャネル(非選択性カチオンチャネル)を通る電流の増大が認められ、これらのチャネルの関与が示唆された。一方、近年開発された膜透過性のInsP_3レセプター作用薬である2-aminoethoxydiphenyl borate(2APB)の細胞内Ca^<2+>動態に対する作用の検討により、2APBは非選択性カチオンチャネルまたはCa^<2+>依存性Cl^-チャネルを抑制することが示唆された。そこで、2APBは本研究のCa^<2+>流入経路を調べる上でのツールとして有用と思われ、これを用いてさらに詳細な検討を進めたい。
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