2003 Fiscal Year Annual Research Report
低酸素環境における動脈性化学受容器の順応過程の分子機構
Project/Area Number |
14570073
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Research Institution | International Buddhist University Junior College Division |
Principal Investigator |
林田 嘉朗 四天王寺国際仏教大学短期大学部, 教授 (40047204)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平川 晴久 防衛医科大学校, 医学部, 助教授 (10258626)
日下部 辰三 国士舘大学, 体育学部, 教授 (80117663)
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Keywords | 頚動脈小体 / 慢性低酸素 / 高二酸化炭素 / 順応 / 免疫組織化学 / 自律神経 |
Research Abstract |
頸動脈小体はグロムス細胞、支持細胞、神経終末および毛細血管からなる器官で、動脈血の酸素分圧、二酸化炭素分圧およびpHの情報を呼吸中枢に伝え、反射的に呼吸運動を調節する監視の役割を担い、低酸素環境への順応の過程で重要な役割を持つ。本研究では三つの二酸化炭素分圧の条件で10%低酸素環境(Hypocapnic, IsocapnicおよびHypercapnic Hypoxia)への順応過程で起こるラットの頸動脈小体の血管の新生と拡張、および頸動脈小体グロムス細胞の肥大と数の増加に関与する因子を調べ以下の結果を得た。 1)Wistarラット群を12週に至るまで段階的に低酸素暴露し、動脈性化学受容器(頸動脈小体)を形態学的・免疫組織化学的に解析した。頸動脈小体は低酸素暴露期間が長くなるに従って徐々に肥大し、暴露期間8週間と12週間ではほぼ同じ大きさになることから、頸動脈小体の肥大を指標にした低酸素への順応は少なくとも8週間は必要であると考えられる。 2)低酸素環境の8週間にわたり二酸化炭素の三つの条件に対する頸動脈小体の免疫組織化学的な検索を行った。対照に比べ3つの二酸化炭素条件の低酸素でSPとCGRPは有意に少なくなり、VIPは増加した。これに対し、NPYはHypocapnicおよびIsocapnic Hypoxiaでは変化がなかったが、Hypercapnic Hypoxiaでは増加した。さらにこれらのペプチド性神経線維が時間経過において一様に増減するのかどうかを、Hypocapnic Hypoxiaの条件でしらべてみると、SPとCGRPは4週目で対照よりいったん増加し、8週目で低下した。またVIPは一様に増加し、NPYは全く変化しないことが確認できた。これらの神経線維は主に血管周囲に存在していることから、頸動脈小体の低酸素環境への順応過程における血管の収縮・拡張に関与することが示唆された。 3)各々片側のみの洞神経を切除したラット、洞神経切除と交感神経節切除したラット、および洞神経切除、交感神経節切除と迷走神経切除したラットを慢性的に作成した。8週間の低酸素暴露(Hypocapnic Hypoxia)を行い免疫組織化学的にIntact側と比較検討した。その結果、すべての神経切除で頸動脈小体の肥大の程度は少ないが、洞神経切除と交感神経節切除したラットでは最も血管の拡張が著明でそれに伴い頸動脈小体も比較的大きかった。そのことは頸動脈小体の肥大には支配神経が、血管の拡張には迷走神経系の関与があることが示唆された。 4)低酸素条件の影響を除いて二酸化炭素分圧の上昇(6%二酸化炭素)のみで8週間Hypercapnic normoxiaに暴露して、頸動脈小体の形態学適学的検索を行った結果、頸動脈小体の肥大・血管の拡張は見られなかった。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Yoshiaki Hayashida: "Electrical properties of chemoreceptor elements in the carotid body."Microscopy Reseach and Technique. Vol.59. 243-248 (2002)
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[Publications] Tatsumi Kusakabe: "Changes in the peptidergic innervation in the carotid body of rats chronically exposed to hypercapnic hypoxia : an effect of arterial CO_2 tension."Histology and Histopathology. Vol.17. 21-29 (2002)
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[Publications] Tatsumi Kusakabe: "Peptidergic innervation in the rat carotid body after 2,4,and 8 weeks of hypocapnic hypoxic exposure."Histology and Histopathology. Vol.18. 409-418 (2003)
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[Publications] Kazuo Ohtomo: "Immunohistochemical study of the carotid body during acute hypoxia."Advances in Experimental Medicine and Biology. 536. 109-116 (2003)
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[Publications] Tatsumi Kusakabe: "Rat carotid bodies in systemic hypoxia-involvement of arterial CO2 tension in morphological changes."Advances in Experimental Medicine and Biology. 536. 611-617 (2003)
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[Publications] Hideki Matsuda: "Nitric oxide and calcium binding protein in hypoxic rat carotid body."Advances in Experimental Medicine and Biology. 536. 353-358 (2003)