2003 Fiscal Year Annual Research Report
細胞外ATP分解酵素とプリン受容体の細胞内局在による機能的な共役機構の解析
Project/Area Number |
14570082
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Research Institution | Fukushima Medical University School of Medicine |
Principal Investigator |
松岡 功 福島県立医科大学, 医学部, 助教授 (10145633)
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Keywords | ATP / アデノシン / エクトヌクレオチダーゼ / P2受容体 / P1受容体 / 内皮細胞 / 活性酸素 / リゾリン脂質 |
Research Abstract |
ラット冠循環におけるアデニンヌクレオチド代謝におよぼす虚血の影響を検討した。冠血管内に投与したATPは速やかにアデノシン(Ade)に変換され、Ade受容体を介した効果を現した。冠血管のATP分解にはecto-apyrase(CD39)が関与し、Adeの産生はecto-5'-nucleotidase(CD73)により媒介されていた。一方、虚血心ではATPの代謝が低下し、虚血直後の再灌流液にはCD39の流出が認められた。以上の結果から、虚血急性期の冠血管床ではCD39が血液中に遊離-消失しATP代謝活性が減少している可能性が示唆された。虚血心では細胞膜リン脂質の代謝が亢進し、大量の脂質メディエーターが産生される。そこで、脂質メディエーターのうちリゾリン脂質に注目して細胞外ATP分解活性におよぼす影響を検討した。培養血管内皮細胞の細胞外ATP分解活性は、リゾホスファチジルコリン(LPC)により濃度依存的に増大した。このLPCによるATP分解活性の亢進は、細胞膜透過性を亢進させるLPCの作用より低濃度で認められた。LPCのATP分解活性亢進作用はCD39を発現させたHEK293細胞でも再現された。側鎖の脂肪酸が異なるLPCの作用を検討した結果、デカノイン酸では作用がなくミリスチン酸より長鎖の脂肪酸を持つことがCD39の活性化に必要であった。他のリン脂質ではリゾホスファチジルセリン、リゾホスファチジルイノシトールには作用が認められたが、リゾホスファチジン酸、スフィンゴシン-1-リン酸は無効であった。さらに、LPCを処理した細胞では酵素活性が反応液中に遊離し、LPCを洗浄した後では細胞のCD39活性が低下していた。以上の結果から、虚血心で認められたATP分解酵素の遊離には心臓内で産生されたリゾリン脂質により生じる可能性が示唆された。
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[Publications] Li L, Matsuoka I, et al.: "Inhibitory effect of fluvastatin on lysophosphatidylcholine-induced nonselective cation current in guinea pig ventricular myocytes"Mol Pharmacol. 62(3). 602-607 (2002)
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[Publications] Watanabe Y, Matsuoka I, Kimura J.: "Chronic administration of amiodarone does not affect Na^+/Ca^<2+> exchange current in guinea pig cardiac ventricular myocytes"Jpn J Pharmacol. 90(1). 21-27 (2002)
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[Publications] 松岡 功: "ATP受容体を介する細胞応答と細胞外ATP代謝酵素の役割"福島医学雑誌. 53(2). 125-142 (2003)
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[Publications] Matsuoka I, Ohkubo S: "ATP-and adenosine-mediated signaling in the central nervous system : Adenosine receptor activation by ATP through rapid and localized generation of adenosine by ecto-nucleotidases"Jpn J Pharmacol. 94(2). 95-99 (2004)
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[Publications] 松岡 功: "神経系におけるエクトヌクレオチダーゼ"臨床化学. 33(1). 127-134 (2004)