2002 Fiscal Year Annual Research Report
結核菌の薬剤耐性における薬剤排出ポンプの役割の遺伝学的解析
Project/Area Number |
14570253
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
谷口 初美 産業医科大学, 医学部, 教授 (00037483)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 みどり 産業医科大学, 医学部, 助手 (40320345)
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Keywords | 結核菌 / 薬剤耐性 / 薬剤排出ポンプ |
Research Abstract |
多剤耐性を獲得する機構として、薬剤排出ポンプの関与が注目されている。 申請者らは約70%のカナマイシン耐性臨床分離株が16S rRNA遺伝子の変異によりカナマイシン耐性を獲得していることを既に明らかにしている。16S rRNA遺伝子に変異を有しないカナマイシン耐性株のうち、92%に薬剤排出ポンプに関係するtap遺伝子の挿入変異が認められ、薬剤耐性との関与が強く示唆されている。そこで、薬剤排出ポンプの変異と薬剤耐性との関係を明らかにする。 野生型および変異型tap遺伝子をpCR2.1vectorに挿入した組換え体プラスミドを有する大腸菌について、薬剤耐性と増殖・形態に与える影響を検討した。 1、大腸菌での薬剤耐性試験 野生型および変異型tap遺伝子を持つ大腸菌の薬剤感受性試験を行った。ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、テトラサイクリン、ニューキノロン剤、いずれにおいてもMICに差は認められなかった。 2、大腸菌での増殖と形態の比較 vectorおよび野生型tap遺伝子を持つ大腸菌は同様のgrowth curveを示した。それと比較し、変異型tap遺伝子を持つ大腸菌は増殖が抑えられた。 vectorおよび野生型tap遺伝子を持つ大腸菌は長さが均一な桿菌であったが、変異型tap遺伝子を持つ大腸菌では、菌体の一部が膨化したり、フィラメント状に長くなっており、ダメージを受けていた。 以上の結果より、tap遺伝子に変異がある場合、大腸菌の増殖と形態に変化を与えることを見出した。 変異型TAPタンパクの大量産生は、宿主大腸菌に致死的な影響を与えると考えられたため、コピー数の少ない他のvectorへの挿入を試みている。またMycobacterium smegmatisに野生型および変異型tap遺伝子を挿入し、カナマイシン耐性および他の薬剤耐性との関係を検討する予定である。結核菌の全ゲノム配列より約20種の薬剤排出ポンプの存在が考えられ、それらについても検討したい。
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