2003 Fiscal Year Annual Research Report
グリコール誘導体による生殖障害・造血障害とその発生機構に関する研究
Project/Area Number |
14570317
|
Research Institution | National Institute of Occupational Safety and Health, Japan |
Principal Investigator |
王 瑞生 独立行政法人産業医学総合研究所, 健康障害予防研究部, 主任研究員 (10321895)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
須田 恵 独立行政法人産業医学総合研究所, 健康障害予防研究部, 研究員 (90415969)
本間 健資 独立行政法人産業医学総合研究所, 健康障害予防研究部, 部長 (90332402)
|
Keywords | 国際研究者交流 / グリコール誘導体 / セロソルブ / 有機溶剤 / 毒性 / 健康影響 / 遺伝子多型 |
Research Abstract |
エチレングリコールモノエチルエーテル(EGEE、別名2-エトキシエタノール、またはセロソルブ)はグリコール誘導体の一種である。水溶性と脂溶性の両方の性質を持っており、呼吸器からだけではなく、皮膚からも容易に吸収される。体内でエトキシアセトアルデヒドに変換され、さらにALDH2に代表される酵素によってエトキシ酢酸に代謝され、体外へ排泄される。 本年度はこの溶剤を使用している印刷材製造工場で働いている男性従業員の生殖系の障害と曝露との関係について調査研究を行なった。曝露群の作業現場において2-25ppmのEGEE暴露であったが、対照群は暴露されていなかった、または微量の曝露しか受けていなかった。両群にそれぞれ19名の従業員がおり、年齢はそれぞれ24.7と28.7歳であった。一部の従業員から精子サンプルの提供を受け、種々の検査を行なった。曝露群従業員の平均精子濃度は対照群より著しく低かった。また、精子の活力の指標である前進運動率もEGEE曝露群においても有意に低下した。正常の形態を有している精子の割合は両群の間に有意な差が認められなかったが、EGEEE曝露群において減少傾向があった。また、血中性ホルモンの濃度測定も行ったが、テストステロン、LH、FSHのいずれの血中濃度も両群の間に有意な差が認められなかった。これらの結果は、2EE曝露が体内の精子生成(精子の数、活動度、形態など)に障害を与え、男性の生殖機能に影響を与える可能性を示唆した。一方、今回の曝露レベルでは性ホルモンの変動が観察されなかった。今後、EGEEの代謝過程で重要な役割を果たしているALDH2酵素の遺伝子多型による影響について解析し、EGEEの生体影響の発生機構を解明する。
|