2003 Fiscal Year Annual Research Report
面接聞き取り調査から得られた原爆被爆体験に関する口述記録の分析
Project/Area Number |
14570341
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
三根 真理子 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教授 (00108292)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柴田 義貞 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (40010954)
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Keywords | 原爆被爆者 / 被爆体験 / 口述記録 / GHQ-30 / テキスト / 精神的健康度 |
Research Abstract |
長崎市在住の原爆被爆者1237人を対象に、被爆時の状況や被爆体験に関する面接聞き取り調査を1997年に行なった。本研究では、被爆から50年以上が経過した現在においてもなお残る「こころの傷」の全体像を把握するために、同調査から得られた口述記録をテキスト型データ解析の方法を用いて分析を行なった。解析対象は1237人中、性別、年齢、GHQ-30、被爆距離の項目がすべて判明している928人とした。まず、テキスト化された口述記録を"要素"(例えば、「原爆」、「ピカッ」、「死体」、「やけど」、「後悔」)に分解した。同じ意味を持つひらがな、カタカナ、漢字での表記はまとめ、関係のない単語は除外した。方言や表現の違いは同じ"要素"としてまとめた。例えば「光」、「光って」、「ピカドン」、「ピカッ」、「ピカー」は「光」という"要素"とした。また「燃えよった」、「燃えよる」「燃えてる」は「燃える」という"要素"とした。最も出現頻度が高かった"要素"は「原爆」で口述記録の90%を占めていた。ついで「死んだ」が73.5%、「母」が67%であった。次に身体的なもの(火傷、怪我、病気など)、悲惨な状況をあらわす景色(ガラス、爆風、火事など)、家族、こころ、混乱状態、その他にグループ化し、被爆体験を構成する"概念"を抽出した。被爆体験に関する"要素"や"概念"が各対象者の口述記録に現れる頻度と、要素間あるいは概念間の相関関係を調べた。さらに性別や被爆時の年齢、被爆距離といった対象者の属性により"要素"の出現頻度を比較した。また1997年の聞き取りの際に行なったGHQ(General Health Questionnaire)-30項目質問紙調査の結果と、被爆体験に関する"要素"の出現頻度との関連を調べることで、精神的健康状態との関連についても検討を行なった。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 三根真理子 他: "被爆者の急性症状と検査値との関連"広島医学. 55・3. 149-150 (2002)
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[Publications] 本田純久 他: "思い出し調査における記憶の確からしさ"広島医学. 55・3. 187-189 (2002)
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[Publications] S.Honda et al.: "Mental health conditions among atomic bomb survivors in Nagasaki"Psychiatry and Clinical Neurosciences. 56. 575-583 (2002)
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[Publications] 三根真理子 他: "被爆者における急性症状発現から死亡までの検査値の推移"長崎医学会雑誌. 77. 100-103 (2002)
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[Publications] Y.Ohta et al.: "Psychological distress among evacuees of a volcanic eruption in Japan : A follow-up study"Psychiatry and Clinical Neurosciences. 57. 105-111 (2003)