Research Abstract |
本研究は,某市との契約のもと全員の介護保険レセプトデータをもとに,保険料発生の前後を経時的に比較して影響を明らかにすることである。初年度は時系列データの整備ができず断面調査を行ったが,本年度は,介護保険開始の2000年4月から,2003年2月分までの全市民のレセプトデータを入手し,データに加工することができた。この間に25,696人月分のレセプトデータがあり,この間1か月でも介護保険を利用した者は1,869人であった。 介護保険開始からの時系列変化を,保険料免除であった平成12年4月から9月の半年(期間1),保険料が半額発生した平成12年10月から平成13年9月の1年(期間2)および保険料が全額発生した平成13年10月から平成16年2月(観察期間の終了)までの17か月(期間3)を比較した。全体の1か月平均利用者は,1,2,3期と順に596人,657人(1に比して10%増),840人(1に比して40%増)と増えていたが,1人あたりの利用額の伸びは同様に9%増,20%増となっており,1人あたりの利用の増加より,新規参入者の増加が多かった。この変化を介護度別でみると,要介護度1の新規利用者が3期にとくに増えており,ほとんどが訪問介護の利用者であった。また,要介護度5では,3期に施設利用者が増え,在宅利用者は減少した。 また,一部の地域で保険料の全額化に対して実施したアンケート調査の結果では,保険料の増額に対する負担感を,介護保険後にサービス利用を開始した者の33%,以前から利用していた者の48%が訴えており,保険料増額に伴って利用を増やした者は,前者の20%,後者の2%であり,有意差があった。 これらの結果から,保険料の増加時期にあっても,新規利用者は増え,全体の1人あたりの利用も漸増していた。 また,負担感は感じるものの,かえって利用しようとするものも増え,保険の周知とともに権利意識も発生してきたと考えられる。一方で,要介護度5においては施設入所が増えており,これらの変化の詳細な検討が課題である。
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