2002 Fiscal Year Annual Research Report
レセプト情報より薬剤有害作用を検出するデータマイニング手法の開発に関する研究
Project/Area Number |
14570373
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Research Institution | National Institute of Public Health |
Principal Investigator |
岡本 悦司 国立保健医療科学院, 技術評価部・研究動向分析室長 (90247974)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大坪 浩一 国立保健医療科学院, 技術評価部, 主任研究官 (80248559)
林 謙治 国立保健医療科学院, 次長 (00124404)
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Keywords | レセプト / 有害事象 / データマイニング / 小柴胡湯 / 間質性肺炎 |
Research Abstract |
【目的】極めて稀に起こりうる薬剤の有害事象を,大量のレセプトデータよりデータマイニングの手法によって検出する原理とプログラムを開発する。 【使用データと倫理配慮】対象としたのは旧厚生省保険局調査課が収集入力したレセプトデータ(95年11月診療分,外来,231,342件)である。データの概要については公表済(地域差研究会「医療費の地域差」東洋経済2001年)。データ使用につき保険局調査課と平成13年11月21日付けで使用契約を締結した。平成14年4月22日科学研究費補助金交付内定を受け,4月30日国立保健医療科学院倫理審査委員会に研究倫理審査申請を行い,平成15年1月17日承認された(NIPH-IBRA#03001)。疫学研究倫理指針に基づきインフォームドコンセント免除の条件とされる情報公開の目的でインターネットにホームページ(jdrug.com)を開設し研究実施を公告した。 【方法】レセプトデータが収集された95年11月以降に有害事象が明らかになった薬剤を対象薬として選択し,その適応症を傷病名に有するレセプトを抽出する。そのレセプトの中で,対象薬を投与されたレセプトとその他レセプトを分け,有害事象とされる傷病名や症状名の出現頻度を両者間で比較する。 倫理審査委員会の承認が遅かったため,今年度は一つの薬剤のみをとりあげた。対象薬は小柴胡湯,適応症は慢性肝炎,有害事象は間質性肺炎(呼吸困難)である。レセプトデータが収集された直後の96年3月に「慢性肝炎,肝硬変の患者に投与した場合,稀に間質性肺炎が発生」として緊急安全性情報が出された(No.95-2)。情報によると94年1月以降の4年間に間質性肺炎88例(うち死亡10例)が報告されたという。小柴胡湯のこの有害事象が95年11月のレセプトでどれだけ検出できたかを検証した。 231,342件の外来レセプト中,傷病名に慢性肝炎を含むレセプトは7,267件あった。小柴胡湯は24社より26の名称(薬剤コード)で販売されており,それら全てを抽出したところが投与されていたものは550件であった。有害事象は傷病名と症状名の両面から試みた。すなわち間質性肺炎(4860015)が含まれる「肺炎,病原体不明(4860000〜4869999)」及び「呼吸器に関する症状(7860000〜7869999)」である。 【結果】小柴胡湯投与550件と非投与慢性肝炎レセプト6717件のこれら傷病及び症状名の出現数は,肺炎が3/550vs.75/6717,呼吸器症状が3/550vs.44/6717であった。出現率はそれぞれ肺炎0.55%vs.1.12%,呼吸器症状0.55%vs.0.66%と予想に反して小柴胡湯を投与されていない慢性肝炎レセプトの方が出現率は肺炎の傷病名でも呼吸器症状名でも逆に多かった。本データは対象市町村の全数でありて抽出標本ではないため,統計的検定は行なわなかった。 【考察と今後の展開】最初に検証した慢性肝炎に対する小柴胡湯の間質性肺炎(呼吸器症状)という有害事象についてはむしろ予想に反する結果であった。安全性情報によると「稀に」とは0.1%未満の頻度を指し,23万件余の大量データであっても検出は困難であることが示唆された。今後はもう少し頻度の高い「時に(0.1〜5%未満)」出現する有害事象について検出可能性を試みる。
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