短鎖脂肪酸を介する慢性関節リウマチ滑膜細胞の炎症性サイトカイン産生の抑制の研究

2002 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 14570400
• Research Institution: Hokkaido University
• Principal Investigator: 天崎 吉晴 北海道大学, 医学部・附属病院, 助手 (50312369)
• Keywords: 関節リウマチ / TNFα / 短鎖脂肪酸 / 炎症 / 転写因子

Research Abstract

関節リウマチ(Rheumatoid arthritis、RA)は全身の大小関節の滑膜を病変の主座とする難治性の慢性炎症性疾患である。RAの滑膜炎の病態形成には種々の炎症性サイトカインが関与し、中でもTNFα-TNFレセプター系の重要性が明らかにされている。近年、炎症性腸疾患の領域の研究で短鎖脂肪酸、中でも酪酸がTNFαの産生抑制効果を有することが近年示唆されている。しかしながら酪酸の他の炎症性病態への応用可能性や、そのTNF系への作用メカニズムの詳細は十分解析されていない。そこで本研究において、培養滑膜細胞を用いた酪酸のTNFα産生系に対する影響の検討を行いった。
結果、酪酸が滑膜細胞の刺激依存性TNFα産生に対し抑制効果を示すことが確認され、またその抑制作用はmRNAレベルで認められた。RA滑膜炎におけるTNFα産生異常の重要な責任細胞は単球-マクロファージ系細胞であるとされるが、酪酸の上記作用はヒト末梢血単球、およびマウスマクロファージ系RAW264.7細胞にも共通して証明された。そこでTNFα5'プロモーター領域、およびその重要な転写活性化因子NF-kB結合配列を用いたluchiferase assayにて酪酸の作用を検討した。予想に反し、酪酸は上記の活性を阻害せず、むしろ自身のHDAC抑制作用を介すると思われる転写促進効果を示した。よって酪酸には転写調節以外の機序によるTNF mRNA産生調節作用があることが強く示唆され、スプライシング機構への影響、3'UTRを介するmRNA半減期調節機序への影響を検討した。現在までに、酪酸がTNFαの3'UTR内に存在するAUR配列を介してそのturn overに影響を及ぼす結果を得ており、その機構の詳細や介在蛋白の同定、およびこれらを介した治療応用の可能性を次年度で明らかにすべく、ひきつづき検討を行っている。