2003 Fiscal Year Annual Research Report
肝癌でのPI3Kシグナル伝達とPR39アナログによるPI3Kp85標的治療
Project/Area Number |
14570439
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
渡 二郎 旭川医科大学, 医学部, 助手 (10311531)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大竹 孝明 旭川医科大学, 医学部, 助手 (10359490)
高後 裕 旭川医科大学, 医学部, 教授 (10133183)
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Keywords | 内因性抗菌ペプチド / 標的治療 / 肝癌 |
Research Abstract |
PR-39はブタの小腸粘膜および白血球から精製されたprolineに富む内因性抗菌物質で,自然免疫機構を担う分子のひとつである.近年,この抗菌活性に加えて,proteoglycan型接着分子であるsyndecanの発現を誘導し,皮膚の創傷治癒を促進することがハーバード大学との共同研究で明らかとなった.(Gallo R.L.,Proc Natl Acad Sci USA,1994)我々は,このsyndecan familyのひとつであるsyndecan-1の発現が高転移能を有する肝細胞癌において低下していることを報告した.(Matsumoto A.,Int J Cancer,1997)そして,肝癌細胞へsyndecan-1遺伝子を導入し,肝癌細胞の浸潤能が低下することを明らかとした.次に,我々は,syndecan-1の発現誘導因子であるPR-39遺伝子を導入する事により,肝癌細胞の浸潤能が低下することに加え,細胞形態とactin構造が変化することを明らかとした.(Ohtake T.,Br J Cancer,1999)活性型PR-39は5連続するproline-richモチーフPXXPPXXPを持ち,このproline-richモチーフはSrc homorogy 3(SH3)domainに結合する能力を持つ.実際にPR-39はp47phoxやp130casなどの細胞内シグナル分子のSH3 domainに結合し作用することが報告されている.PR-39遺伝子導入による細胞の変化は、PR-39が情報伝達経路に関与することにより起こると想定し,細胞内情報伝達経路の中心をなしその伝達経路が最も解明されているrasの活性型遺伝子導入による形質転換線維芽細胞(マウスNIH3T3)を用いてPR-39の作用機序について検討した.PR-39はras遺伝子による形質転換線維芽細胞においてactin構築を変化させ,細胞増殖を抑制すること,MAP kinase活性を低下させることを示した.そしてこれらはPR-39がPI3 kinase p85aに結合することによりPI3 kinase活性が低下して細胞内情報伝達経路が修飾されることによると考えられた.(Tanaka K.,Jpn J Cancer Res,2001)腹腔内投与したPR-39オリゴペプチドではヌードマウスの皮下に移植したras遺伝子による形質転換線維芽細胞の増殖抑制効果は認めなかった.現在,PR-39を皮膚上皮に強制発現させているトランスジェニックマウスを用いてras形質転換線維芽細胞の増殖抑制効果を検討中である.
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