2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14570477
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
伊藤 鉄英 九州大学, 大学病院, 助手 (50253448)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
有田 好之 九州大学, 大学病院, 助手 (10294927)
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Keywords | 急性膵炎 / VIP / VIP受容体 / Monocyte / Cytokine |
Research Abstract |
<背景および目的> 急性膵炎においてはその重症化および臓器障害発症(多臓器不全や敗血症など)には複雑な免疫反応および炎症過程が関与している。一方、Vasoactive Intestinal polypeptide (VIP)受容体がリンパ球、単球、マクロファージ等の免疫担当細胞に存在する事が明らかになり、VIPの免疫応答および炎症反応への関与が示唆されている。しかしながら急性膵炎に対するVIPの作用はこれまで検討されていない。このため本研究では、(1)VIPの治療効果の検討、(2)VIPの免疫担当細胞への関与、および(3)VIPの免疫系を介した抗炎症作用のメカニズムの解析を目的とし急性膵炎に対するVIPおよび2つの選択的VIP受容体アゴニスト(VPAC1受容体アゴニストおよびVPAC2受容体アゴニスト)の作用を検討した。 <方法> Balb/c雄性マウスにCn(50mg/kg)を1時間毎に計4回腹腔内投与し、Cn初回投与の5時間後、更にLPS(8mg/kg)を腹腔内投与する事により急性膵炎モデルを作成した(Cn-LPS膵炎群)。膵炎群では生理的食塩水を、治療群ではVIP、VPAC1受容体アゴニスト、VPAC2受容体アゴニスト・セクレチンのいずれかをLPS投与前後の各30分に5nmol/body腹腔内投与し、Cn初回投与7時間後の血清アミラーゼおよびサイトカイン値(TNF-a、IL-6、IL-10)、さらに24時間後の膵組織障害を評価した。In vitroでは、Balb/c雄性マウスの脾臓由来の単球におけるVPAC1受容体およびVPAC2受容体の発現のを検討した。またLPS刺激(100ng/ml)下にて、単球(5x105/ml)にVIP、VPAC1受容体アゴニスト、VPAC2受容体アゴニスト(10-12M〜10-6M)のいずれかを添加し24時間培養後、上清中のサイトカイン値(IL-6、TNF-a)を測定し、単球の炎症性サイトカイン産生能を評価した。 <結果> In Vivoにおいて、血清アミラーゼ値はVPAC1受容体アゴニスト投与にて有意に低下したが、逆にVPAC2受容体アゴニスト投与では増加を認めた。VIPおよびセクレチン投与群では有意な変化はみられなかった。組織学的にはVIPおよびVPAC1受容体アゴニスト投与にて膵炎改善効果が認められた。またVPAC1受容体アゴニスト投与により血清IL-6およびTNF-a値は有意に低下した。In vitroではVIP受容体サブタイプ両者の単球における発現を認めた。さらに単球のIL-6産生は、VIP添加群では低濃度(10-10M)で一旦抑制され高濃度(10-6M)で増強されるという二相性のパターンを示した。VPAC1受容体アゴニスト添加群ではIL-6産生は濃度依存性に抑制され、逆にVPAC2受容体アゴニスト群では濃度依存性の増強作用が認められた。一方、TNF-a産生はVPAC1受容体アゴニスト群のみにて濃度依存性に抑制された。 <結論> VIPはマウス急性膵炎モデルに対し、形態学的および血清学的に進展阻止作用を示した。その作用は、主にVPAC1受容体を介した単球・マクロスァージの炎症性サイトカイン産生抑制によると考えられた。本研究の結果より、今後急性膵炎の治療薬としてVIP、特に選択的VPAC1受容体アゴニストの臨床応用が期待される。
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Research Products
(2 results)