2002 Fiscal Year Annual Research Report
肝硬変症に伴なう食道・胃静脈瘤発生機序の分子生物学的アプローチと治療の試み
Project/Area Number |
14570529
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
早田 哲郎 福岡大学, 病院, 講師 (30289532)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横山 昌典 福岡大学, 病院・助手 (20341448)
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Keywords | 肝硬変症 / nitric oxide (NO) / 血管内皮細胞増殖因子(VEGF) |
Research Abstract |
肝硬変症の合併症としての側副血行路の出現は臨床上重要であり、この内、食道・胃静脈瘤は患者の予後にも大きく影響する。しかしこの側副血行路形成のメカニズムは不明な点も多く残されており、内服治療も確立されたものはない。本研究ではnitric oxide (NO)と血管内皮細胞増殖因子(VEGF)に着目して、側副血行路形成のメカニズムを追求し、さらには治療法の開発を目指している。 食道・胃静脈瘤をともなう肝硬変患者30名および対照者についてeNOS遺伝子とVEGF遺伝子のpolymorphismを調べた。肝臓カテーテル検査はこのうち10名の患者に行なった。門脈圧測定の他、NO測定を行なった。これらは症例を追加して、結果の分析を行なう予定である。 食道・胃静脈瘤に対する静脈瘤結紮術とバルーン下逆行性静脈瘤閉塞術を施行した肝硬変患者の血中VEGFを治療前後で比較した。7例中4例で術後のVEGFは明らかに上昇しており、治療による門脈圧上昇がVEGFの発現を増強させた可能性が示唆された。 一方、VEGFは、血管浸透性に関与する物質であり、癌性腹膜炎における腹水貯留の一因であると考えられている。今回検討した肝硬変患者のうち、腹水をともなう肝硬変患者の血中VEGFは、腹水をともなわないものに比べ高い傾向がみられ、門脈圧亢進症における腹水貯留のメカニズムを解明する手ががりになると考えられる。
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