2003 Fiscal Year Annual Research Report
肝硬変症に伴なう食道・胃静脈瘤発生機序の分子生物学的アプローチと治療の試み
Project/Area Number |
14570529
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
早田 哲郎 福岡大学, 病院, 講師 (30289532)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横山 昌典 福岡大学, 病院・助手 (20341448)
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Keywords | 肝硬変症 / nitric oxide (NO) / 血管内皮増殖因子(VEGF) / 食道・胃静脈瘤 / 急性肝炎 |
Research Abstract |
肝硬変に伴う、食道・胃静脈瘤と血管内皮増殖因子(VEGF)について、以下の研究を行ってきた。 食道・胃静脈瘤を伴う肝硬変患者は、それらを伴わない肝硬変に比べ、VEGF遺伝子のmutationが少ない傾向があった。また、内視鏡的食道静脈瘤結紮術(EVL)後の血中VEGFは上昇するが、VEGF遺伝子のmutantでは軽度であった。EVL後には門脈圧が上昇することから、門脈圧亢進時にVEGFが誘導され、静脈瘤形成に関与する可能性を示唆する。またVEGF遺伝子のmutantは、そのリスクがやや少ない可能性がある。 また、腹水を伴った肝硬変症例ではVEGFが高い傾向を認めた。門脈圧亢進症が腹水発生におよぼす影響について、今まで明確な機序は分かっていなかったが、VEGFは血管透過性を亢進させる因子でもあるため、門脈圧亢進時のVEGF誘導が関与している可能性が示唆された。肝硬変における腹水発生の主な機序は、低アルブミン血症による血管透過性亢進であるが、著明な低アルブミン血症があるにもかかわらず、腹水貯留がない肝硬変患者ではVEGF遺伝子のmutantが多い傾向にあった。 一方、VEGFは抗アポトーシス作用などを有しており、細胞障害を防御する働きもある。抗Fas抗体投与により作成したマウス急性肝炎モデルにおいて、VEGF投与はトランスアミナーゼの上昇を著明に抑制した。組織学的にも肝障害を抑制し、肝内のアポトーシスは明らかに減少していた。 今後、肝硬変についてはさらに症例を増やし、また急性肝炎についてはVEGF遺伝子型とヒトの重症型急性肝炎の予後との関連まで検討する予定である。
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